酒と男と喧嘩な話(2)


気付かねぇほど馬鹿じゃねぇ。



アイツも、実際はアホなマヨラーだが、一応真撰組の頭脳と呼ばれる男だ。どっかで気づいちゃいるだろう。

俺達の間におかしな関係があることを。



 腰が痛ェ脚が痛ェ。
屋根の修理ってのはとにかく腰が痛くなる。恐らくはずっと屈んでるせいなんだろうが。

 昼間、珍し……いつも通り必死に仕事に勤しんだ俺は、川沿いを下っていた。
先ほどまで降っていた雨も止み、雨のにおいを残したままの風が吹き抜けていく。
「いー風じゃねぇか…」
思わず一人呟き、伸びをした。
若干腰がパキッて言ったのは断じて俺の空耳だから。気のせいだから。

 この時期の風ってのは独特の雰囲気がある。
この湿った風が肌に心地良くて、自然と飲みに出かける回数も増えるってモンだ。
もちろん、風に誘われるなんて洒落た理由だけじゃねぇ。

 この時期の楽しみといやぁやっぱり棚卸しになる今年の酒だ。
地酒ってのはどれも独特の個性があって、その年々によって飲み手を楽しませてくれる。
そいつを一番で楽しむってのがこれまた乙なわけだ。

 昨日、定春の散歩をしていたときに呑み屋のオヤジに声をかけられた。
今夜、今年の酒が解禁になるから飲みに来いって話だ。
もちろん2つ返事であいよと返したんだが、そういう日に限って何故か神楽のやつが熱なんぞ出しやがって。馬鹿は風邪ひかねーってのが定番だろうが。
そんなこんなで、昨日は万事屋から外出することも叶わず、今日脚を運ぶハメになっている。

 オヤジと品評会しながらの一杯ってのが格別なんだが……過ぎたことだ仕方ねぇ。今月の給料減らすんで手ェ打ってやろうじゃねぇの、銀さん優しいから。

 こぉっと耳元で微かな音がした。一際、涼しい風が横を吹き抜けていく。
どこかで、少しばかり気の早い風鈴の音がする。

そして、風にたなびく見慣れた紅ののれん。

「よォオヤジー、入ったんだと?」

 ぱさっとのれんを払いのけながら若干滑りの悪い戸を開けた。

 と、同時に、向こうに黒い着流しが見えた気がした。
あと、白い煙……。


――あぁ、昨日も今日もついてねぇなコノヤロー



<つづく>




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