アカリ:秋は、シュウが好きな季節だね。
シュウ:そうだねー、夏からの涼しげな風が心地よいね。
アカリ:でもさ、秋って、あんまり楽しいことないよね?
シュウ:なんで?
アカリ:だって、秋休みって言葉もないし。これと言って長期休暇もないし。
シュウ:休みのことばっかりじゃないか。
アカリ:なーんか寂しいよね。
シュウ:寂しいってのには同感だな。落ち葉が落ち行く情景が物寂しさを語ってるよ。
アカリ:あれ?シュウって、自然に対してそんなに思い入れあったっけ?
シュウ:秋の自然は面白いよ。急激な変化があるものや、のんびり変わっていくものとか。
アカリ:ふーん。あたしにはよくわかんないけど。
シュウ:教えてあげようか?
アカリ:あたしは、もっと学ばなきゃいけないことがあるから。
シュウ:こういうときだけ、自分の勉強の足りなさを堂々と主張するよね。
アカリ:……聞こえが悪いから、そういう言い方やめて。
シュウ:秋はいろんな言葉があるよ。
アカリ:たとえば?
シュウ:「スポーツの秋」とか、「読書の秋」とか。
アカリ:ああ、「食欲の秋」とか?
シュウ:また食べる方向に行くのか……
アカリ:でもさ、なんで「食欲の秋」って言うんだろう?
シュウ:あー、確かに「天高く馬肥ゆる秋」ともいうしね。
アカリ:……なにそれ。
シュウ:言葉の知識から説明しないといけないか……
アカリ:そんな難しい言葉を出されてもね。
シュウ:意味は「空が透き渡り、馬は食欲盛んで肥えていき、たくましくなるのが秋である」ってこと
アカリ:ふーん。確かに「食欲の秋」似たような意味だね。
シュウ:ちょっと違うけどね。
アカリ:で、なんで「食欲の秋」って言うんだっけ?
シュウ:え〜と、秋になると、高気圧が日本を覆うんだよ。
アカリ:うんうん。
シュウ:で、その高気圧が、哺乳類の交感神経を刺激し、それが元で食欲中枢も刺激されて、食欲が出る、と。
アカリ:…………
シュウ:ことわざでも出てくる、「馬肥ゆ」ってのも、馬は哺乳類だから、人間と同じ理由ってわけ。
アカリ:……へ、へぇ〜、そういう理由があるんだ。
シュウ:…理解できてないだろ。
アカリ:そ、そんなことないよ!ちゃんと理解できてるもん。
シュウ:じゃあ、同じように説明してみてよ。
アカリ:う!………理解してませんでした。
シュウ:うむ、素直でよろしい。
アカリ:赤く染まった木々たちは見ものだね。
シュウ:楓とか、もみじとか?
アカリ:そう。
シュウ:でもね、もみじって、色が変わった葉っぱ自体のことを言うんだよ。
アカリ:え!そうなの?
シュウ:楓は、もみじのなかの一つ、ってこと。
アカリ:そうなんだ!
シュウ:まぁ、楓のことをもみじって呼んでも間違いじゃないけどね。
アカリ:へぇ〜。
シュウ:もみじは、葉が分かれてるものをさすから、間違えないようにね。
アカリ:それにしても、葉っぱの色が緑から赤や黄色に変わっちゃうのも不思議だよね〜。
シュウ:心が落ち着くよね。
アカリ:それはわかんないけど……
シュウ:あれね、本当は変わってるわけじゃなくて、あの赤や黄色そのものが葉っぱの色なんだよ。
アカリ:うそ!?そうなの?
シュウ:葉っぱは、葉緑素のお陰で緑に見えてるわけ。
アカリ:あ、夏になったらその葉緑素がなくなっていくから……
シュウ:元の色が出てくる、っていうことなんだよね。
アカリ:へぇ〜!おもしろ〜い!
シュウ:秋って、楽しいでしょ?
アカリ:うん!あたしも秋が好きになってきたかも……
シュウ:秋は風情があって、奥深いから、ステキな季節なんだよ。
アカリ:シュウが言ってたことがわかってきたような気がする。
シュウ:秋のおもしろさ、もっと教えてあげようか?
アカリ:うん!教えて!
シュウ:はは、アカリ、最初は全然興味なかったのに。
アカリ:シュウ〜、何か言った〜?
シュウ:いや、何も言ってないよ。
ここまで秋を推し進めるのは、やっぱり著者自身が秋のこと好きだからだったりb
|