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それはちょっとしたことだった。 俺は居間のソファーで楽譜とにらめっこしていた。 久々にマスターが俺をメインとして作ってくれた曲で、数時間前に楽譜を与えられてから音を頭に叩き込みマスターの思いを読み取ろうとしていたのだ。 「カイト」 あまりにも楽譜に集中していたせいか、呼びかけただけでは気付かなかった。 「カイト、カイトってば!」 はっ、と気が付いた時には彼女の顔が目の前にあった。 つい彼女の柔らかそうな唇に目が行ってしまい俺は馬鹿なことをしでかす前に視線を逸らした。 しかし彼女はそんな俺の様子を勘違いしてしまったようで 「読み込みの邪魔したのはあやまるわ」 と困ったような顔で謝罪した。 そして彼女の手が頭に伸び軽くたたかれる。 「でももうみんな夢の中よ。カイトもそろそろ寝ないと早速ある明日の練習で動けなくなるかもしれないわよ」 彼女の声色から俺を心配しているのが良くわかる。 とりあえず彼女を安心させるため了承の意を示そうと顔を上げようとしたときだった。 頭を抱えられて抱きしめられたのだ。 俺は自分が彼女に抱きしめられているのを理解した瞬間再び固まった。 「大丈夫よ、あんたは出来る子だわ……このメイコ姉さんが保障してあげる」 彼女は俺の背中を軽く叩き優しい声音で呟く。 彼女は明日の練習への不安を解消し落ち着かせようとしているのかもしれないが、この行動は逆効果だった。 彼女の素肌が、豊かな胸が、そして息遣いが俺に触れてくる。 息がつまりそうだった。 どれだけの時間が経っただろうか。 彼女は俺を離し 「それじゃあおやすみなさい、カイト」 と言って去って行った。 結局彼女の感触がいつまで経っても消えなくて眠れず、翌日マスターに怒られるどころか心配されたのはまた別の話。 ”君を想う5つのお題3”より「1.息が、つまるほど」 配布元へはこちら(TV)からどうぞ |
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