突然ですが大変です。
ガイが頭を打って記憶喪失になりました。
「……」
「ガイ!大丈夫か?」
「あ、あぁ…まだ頭痛がするが問題なさそうだ」
宿屋にて手当てを受けてベッドに腰掛ける。
この目の前の朱色の髪の青年――ルークはしきりに大丈夫か?と聞いてくるので俺は誤魔化すように笑う
「何泣きそうな顔してるんだ?記憶がなくても俺は俺だろ?」
「・・・」
記憶はないが、こういっとけば納得してくれるだろうと打算する。
助かることに常識は失っていないのでこういえばたいていの人間は納得してくれると感覚的にわかった。
それなのに目の前のルークは益々泣きそうな顔をして胸倉をつかんできた
「お、おい…!何し―――!」
「思い出せよ!俺のこと!絶対に思い出せ!つか今すぐ思いだせ!」
「んな無茶な…」
「無茶でもやれよ!だって、俺!今のガイ好きじゃねぇもん!」
ルークの言葉に何もいえなくなった。
どうしてとかなんでだとかありきたりな言葉も奪われる。
「ガイはそんな風にわらわねぇ!つらいときに無理して笑えるほどいいやつでもねぇし!むかつくときはむかつくって言ってくれるやつだ!だからガイの顔でそんな顔すんじゃねぇ!」
ルークは俺の胸倉をつかみながらポロポロと泣いていた。
泣くほど俺が大事だったのか、そんなに俺の笑顔は信用できなかったのか
それ以上にお前は俺をよく見ていたんだな
少しだけ嬉しくなる。
「・・・・んだよ」
「お前って、そんなに俺のことが好きなのか?」
「だ、っ!わわわわわわりぃかよ!」
「いーやわるくねぇよ。好かれるっていいもんだな」
よしよしと頭を撫でてやればようやく開放してくれたので隣に座るように促す。
鼻をすすりながら涙を脱ぐ彼を見て素直にいいなぁと思えてしまう
昔の俺はこんなにも愛されていたんだなぁって
右手で涙をぬぐってやり瞼にキスを落とす
「思い出させてくれるんだろ?お前のこと」
「っ―――」
たかが触れるだけの、しかも瞼にしただけなのに顔を真っ赤にする彼
益々可愛くてこんな可愛い彼が俺の恋人だったんだなと思うと胸が温かくなる感覚がする
「じっくり思い出させてくれよ、ご主人様」
「もう主人じゃねぇし!」
そう歯向かうも体は拒絶を見せない
そのまま腕を回して抱き寄せて俺は唇を重ねた
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