浦原×一護 未満




 日常は平々凡々。代わり映えなどしないのだと、そう思っていた。あの瞬間までは。
浦原喜助は世間では所謂天才と言う奴だ。
一を知れば十を知る。周りの人間よりも出来すぎた頭脳とは裏腹に情緒面に関しては全くと言って良いほど子供じみたものだとしても、天才は天才。そして天才と馬鹿は紙一重である、という言葉を実感できる存在でもあった。
才に恵まれ、環境にも恵まれた浦原喜助二十五歳の春。それは唐突に訪れ、今までの価値観をひっくり返す程の出会いだった。



 愛らしい、と言われる容貌は何処か幼さを残していた。
橙色の髪と鳶色の瞳。母親の容貌を色濃く受け継いだ少女の丈の短いスカートが風にふわりと揺れる度にほどよく筋肉の付いたカモシカの様な脚は、所謂美脚と呼ばれる代物を惜しげもなく晒していた。
少女の母親も相当な美貌の持ち主ではあったが、また違った美を持つ娘の姿にさぞかし父親はヤキモキした事だろう。
現にその父親が落ち着き無くうろうろしている。まるで冬眠開けの熊の様な姿に遺伝子の不思議さを知るのだ。
 この春、めでたく高校進学を果たした娘の晴れ姿を涙ながらに拝んだ父親のテンションは異様としか言えないだろう。だが、これが黒崎家の日常なのだ。
腰まで伸ばされた橙色の髪をひとつに纏め、真新しい制服に身を包んだ少女は、綺麗というよりもまだ可愛らしい。だが、人目を惹くその容貌は横に並んだ母親とよく似通っている。それがまた、父親のテンションを上げる事となるのだから悪循環だ。
 浦原喜助の義理の姉である黒崎真咲は三児の親としてはあまりにも若々しく、そして昔とは変わらない穏やかな笑みがよく似合う女性である。
十年ぶりの再会を果たしたものの、真咲の夫である一心のテンションの異常さと目の前の二人の娘である一護に目を奪われたまま言葉無く出された茶をすすった。
はにかむ様に笑みを浮かべた一護を真正面に捕らえた浦原とそんな浦原を面白げに見つめる真咲。
幾分年が離れた義姉弟が久方ぶりに会うにしては良いシチュエーションだろう。一護にとって初めて会う叔父があまりの胡散臭さをかもし出した格好が気になって仕方ないが、何処か真咲と似通った雰囲気を持つ浦原に好印象とまでは言えないがそれなりに気を許しているだろう事は真咲には一目で分かった。
微笑ましい家族の姿が浦原の目の前にあり、十年来の義姉に複雑な心境に陥っていた。
 くるり、と一回転する。それに合わせて揺れるスカートの裾から覗く脚が目の毒だ。
橙色の髪が縁取る眩しい程の笑みに一瞬、見惚れる。それを誤魔化すように視線を彷徨わせ行き着いた先は、パシャパシャと写真を撮る一心の姿。それを一護に見つかり回し蹴りを食らう一心の幸せそうな顔は、何かをやり遂げた達成感に満ち溢れていた。













次はリボーン



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