「最近、ちょっと悩んでるのよね」
 と、リナリアが言った。カウンターの向こうに座り、物憂げに頬杖をついている。
「どうかしたの?」
「私さ、仮にもヒロインなわけじゃない?」
「いきなりぶっこんでくるね」
「ラノベのヒロインってわりには、こう、パンチが足りないと思うのよ。庶民的というか」
「まあ、ラノベヒロイン総選挙とかには出れないだろうね」
 リナリアが僕に人差し指を向ける。
「それよ。ラノベの魅力って、つまりヒロインの魅力ってことじゃない? 読者を萌え~って言わせないと、やっぱりだめかしら」
「良い悪いはさておき、できるの?」
「無理」
「……じゃあこの話、無駄だよね?」
「でも他のヒロインに負けるのって、ちょっと悔しいんだもの」



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