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御礼SS……書き下ろし。
***花瞼
飲み物を取ろうと下を向いた。
軽くまたたいた、その一瞬だった。
それは片目の視界に広がった、平らかな不透明の敷物。
コナン――新一は、二度三度またたいてようやくそれ、の正体を知った。
「……何だ。桜か」
「お、風流やん」
左から声がする。生憎視界はひとひらの花弁に遮られて先刻と同様には見えなかったので、声の主の方へ首を巡らせた。
「昨日の雨でまだ湿っとるさかい、くっついてもうたんやな。――工藤。何するん」
「はなびら邪魔だし」
レンズの手前、左目の先を爪で掻く。空気も抜けてぴたりと収まった花弁を除けようとしたが止められた。
「ええやん、勿体ない。そのままにしとき」
「けど」
「そのうち乾いてひとりでに落ちるやろ」
「……他人事だと思って。電子機器に水入ったらどうすんだよ」
「その割には衝撃には強そうやけどな」
「――まあね。超合金だから」
「変型合体するメガネって嫌やなあ……お、また」
平次のてのひらにほとりと落ちた、薄紅色のひとひら。
それを見た彼はにまりと笑んで指先で持ち上げると、コンタクトレンズを差し出すように新一の眼鏡の内側へと滑らせた。
「な――」
反射的に閉じて開いた目の、左目の先には二枚の花弁。
近すぎて焦点が合わず、形も分からない。
「工藤」
濃い笑みが彩る言葉。
「これで俺、もう見えん?」
「――何すんだよ!……頭動かせば見えるに決まってる――」
させへん、と顎が固定されて。
気配だけが降りてくる。
花の瞼の先に。
***end
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