その唇の温度は、ただそれだけで俺を溶かすのだ。



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下記はお礼になってないお礼です。。。なんか、出来てる二人前提で。臨也さん別人警報発令中。。。ご注意を!
ちなみに現在ランダム表示で3種類あります><




 指の背で触れた。
 少しかさついた柔らかなそれは、まるで乞うようにして薄く開いて。
 俺を誘い込むようにしか見えなくて、くらくらする。
 仄暗い赤だ。




―― temperature of lip ――




 閉じた瞼に思う。
 いつもこうならいいのにと。
 臨也が、静雄より早く目覚めることなど、頻度は逆よりもはるかに多い。
 それは行為でかかる立場的負担の違いか。
 今も隣では淡い色の睫毛を震わせて、静雄は意識を現に保ってはいなかった。
 その横顔を見る、夜の月明かり。
 差し込んだ光は、眩しいというには暗く、だが、彼の目も、鼻も、額も、全てをいやにはっきりと浮かび上がらせていた。
 陶磁器の如き滑らかな白皙の肌。
 瞼を閉じていると、人形じみて整った顔が浮き彫りになるから、臨也は実はこの横顔が好きではなかった。
 どうせなら眉根を寄せて、こちらを睨みつけて、ギラギラした視線で、射抜いてくれている方がいい。
 吐く息全部が悪態でも、一向に構わない。
 心底そう思うのに、だが、その横顔から目を離せないでいる。
 微かでそよぐような息が、薄く開いた唇から漏れて、ふと、それに触れてみたくなった。
 仄赤い唇に、ではない、彼から吐き出される空気に溶けそうな吐息に、だ。
 だから、手をかざす。
 指に触れる微かな気配。
 臨也は知らず笑みを漏らして、すくりと身を起こして上に乗り上げた。
 覆いかぶさるようにして見下ろせば、いまだ目覚めない薄い頬。
 息をするのと同じように睫毛が震えて、瞼も同じように微かに揺れた。
 指の背で触れる。
 少しかさついた唇は、だけど柔らかく温かい。
 いっそ熱いほどだ。
 常日頃から、彼の方が少しだけが体温が高いから、こんな唇の先だとかは、余計に熱く感じるのかもしれないと、どうでもいいようなことを思いながら、誘う官能のように薄く開く唇に、くらくらした。
 思わず、ゆっくりと顔を下ろすのだけれど、寸前でやめる。
 軽く息を吐いて、さっきまでと同じように横へ身を倒した。
 月が揺れて、影が淡い。
 また、流れゆく微かな光。
 遮光の意味をほとんど成さない薄い生地のカーテンは、覗くほどの隙間を見せて。
 其処から真っ直ぐと差し込む光が、静雄の頬を滑って落ちた。
 美しいと。
 きっと誰もが思う光景だったろうけれど。
 臨也は、ただ苦く笑うことしか出来ない。
 今一度指の背で、彼の唇へと触れた。
 柔らかで、少しかさかさしていて、熱い。
 熱い、熱い唇だ。
 その口腔が、もっと更に燃えるようであることを、臨也は疾うに知っていたけれど。
 否、自分以外は知らないはずで、そうでなければいけないとも思う。
 そうして、その熱い唇へ触れた指の背で、自らの唇へ口吻ける。
 臨也の指越しのキスだ。
 そんな曖昧さが、何故だかどうしようもなくたまらなくなって。
 月が、揺れている。
 淡い影。
 白皙の頬は穏やかで、目を覚ます気配もない。

「月明かりの中ってのも。・・・・・・まぁ、悪くはないよね」

 小さく呟いた。
 微かな声で、きっとこんな音では、静雄は起きないと思って、ただ、それでいいと思う、意識のない彼は何処かしら日常と違って、それが途方もなく歯痒く思うのに、そうでなければ許せないとも感じるのだ。
 息を吐いた。
 夜の空気を、阻害しない息。
 今しがた彼の唇へと。
 触れた指の背が口吻けた合間を漏れた息だった。

「ねぇ・・・・・・シズちゃん?」

 小さく問いかけてゆるりと笑んで、臨也は意識を遊ばせた。
 まだ夜明けは遠く。
 確かではない世界で、微睡むのも悪くはない時間だったので。
 ゆるりと揺蕩う自我。
 それは。
 あたかも指の背が触れた、唇の世界のようで。
 きっと、臨也だけの心だったのだろう、夜の中で。
 溶けるように。



Fine.


>>シズちゃんが・・・なんだか空気ですみません・・orz


(2010. 3.24up)







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