「ねぇ臨也くん」 「何?」 「今日はバレンタインだね」 「そうだね、製菓業界の作り上げた一大イベントだ。それが何?」 「興味無いの?」 「異性の絡むイベントは一様にお金になるからね、そこに漬け込んでこのイベントを定着化させた人達の思考には興味があるよ」 「なるほど。確かに凄いよね、マーケティング上手って言うか」 「うん、経済的な観点から見ても彼等の成した功績は大きいと思うよ」 「プレゼントするってなるとラッピングとかにも気合入れちゃうし」 「女性はそう言った部分に凝るのが好きだからね」 「私もリボンとか箱とかそう言う物って見てるだけでワクワクしちゃうなぁ」 「男にはあまり理解出来ない感情だけど、それもまた興味深いね」 「でもホワイトデーはあんまり定着してない気がするよね」 「男性側にとってはあまり重要なイベントじゃないからねぇ」 「3倍返しとか先に言い出したお馬鹿さんは何処の誰なんだろう?」 「さぁね。そもそも見返りを期待して渡されるチョコに魅力を感じる男性がどれ程居るのか、俺はそっちの方が気になるけど」 「確かに、本命ならまだしも義理とかって意味あるのかな…」 「それでも男としては貰いたい、って言う人間は多数の様だけどね」 「臨也くんも?」 「まさか」 「ですよねー」 「まぁ見返りを期待して居ないのであればくれる物については受け取るよ」 「なるほど。それでその結果がこのプレゼントの山なんだ?」 「毎年飽きもせず、ご苦労な事だよね」 「チョコもたくさんあるけどそれ以外の物も多いね。ぉ、これなんてブランド物だよ」 「これらを全て俺が一人で食べて太ったとしたら、くれた子達はどんな顔をするんだろうねぇ」 「臨也くんは顔しか取り得無いんだからそんな事したら大変だよ」 「酷い言い草だね」 「事実でしょ」 「…まぁ残念ながら俺は菓子類はあんまり口にしないから食べ物以外はほぼ処分になるけど」 「手紙とかは?」 「それはもちろん読むよ。手紙からその子の感情を読むのは中々面白いからね」 「プロファイリングしてるみたいだね」 「あながち間違いじゃないかもね。便箋や文字からもその人の性格って結構解るものだし」 「ねぇねぇ、この高そうなチョコ食べて良い?」 「別に構わないけど、何か盛られてても俺は責任取れないからね」 「ぇ、盛られてるの?」 「そりゃぁ俺の場合好意より恨みを持たれてる事の方が多いだろうし?」 「…止めとく……」 「その方が懸命だね。さて、仕分けも終わったし一息入れようか」 「ねぇねぇ、食べ物捨てちゃう理由は解ったけど、この見るからに高そうな時計とかも捨てちゃうの?」 「そっちの袋にまとめた物は捨てるけど、こっちの机に出てる物は捨てないよ」 「その違いは?」 「盗聴機や小型カメラが仕掛けられてるかどうか」 「おぉ…過激だ……」 「それじゃぁ俺はこれ捨てるついでに紅茶淹れて来るから、机の上片付けといて」 「はぁい」 ・・・ 「はいどうぞ」 「ありがと」 「砂糖は?」 「ううん、ストレートで平気」 「そう」 「ぁ、そうだ」 「どうしたの?」 「臨也くんがいつも出してくれるこの紅茶って、Mariage Freresのだよね?」 「そうだよ」 「あのね、これに合うかなって思ってフォンダンショコラ作って来たんだけど…」 「へぇ、良いね。今お皿用意するよ」 「この紅茶って砂糖無しでも飲める位甘くて良い香りだから、それを邪魔しない様に少しビターにしたの」 「確かに、中のチョコのほろ苦さと紅茶の甘みが良く合うね」 「…何か嬉しそうだね?」 「嬉しいよ?見知らぬ人間からの手作りと違って警戒する必要も無いし、彼女の手作りなんて嬉しくない訳が無いでしょ」 「あら素直」 「たまにはね」 「臨也くん臨也くん」 「ん?」 「ちゅー」 「はいはい」 「甘いね」 「チョコだからね」 「さっき臨也くんは見返りを求めないなら受け取るって言ってたけど」 「ん?」 「私は求めてるよ?」 「それは彼女以外の場合だから、心配しなくてもちゃんと返すよ」 「じゃぁPCとかHDDとかPS4とか楽しみにしてるね!!」 「うん。あぁでも…」 「?」 「何倍にして返すかは今夜の頑張り次第かな」 「………」 「どうしたの?顔真っ赤だけど」 「…臨也くんのエロ魔人……」 「やだなぁ、俺は別にまだ何を頑張るかなんて言ってないんだけど?」 「……っ」 「さて、それじゃぁ何を頑張るつもりだったのかベッドでゆっくり聞かせて貰おうかな」 「やっぱりそう言う事じゃん!!ちょっ、持ち上げないで!!寝室に向かわないでー!!!!」 「~♪」 【バレンタインの二人】 - END - |
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