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 窓の外、まるでバルコニーのように空中に突き出したベランダから、大きな声が風樹を呼んだ。
「ん゛ーーー・・」
 風樹は僅かに身じろいだものの、まだ声量が足りなかったらしく、起き出すには至らなかった。しかしその声は、風樹の部屋に入っていき揺り起こすという簡単で、そして常の手段はとらず、再度彼女の名を呼んだ。
「おーーーーーい! 風樹ーーーーーー!!!」
 部屋中に響き渡ったその声に、ついに風樹は眠りから覚めた。
 開かれた瞳の奥にあるのは、木々の緑よりも更に深みを増した色。深緑の瞳と、明るい茶色の髪は、乾翠族特有のもの。
 シーツからもぞもぞと這い出てきた風樹は、自分を起床へと導いた声の主を捜し、視線を窓の外へと向けた。
 そして、そこには見慣れた姿があった。
 地上から浮遊城までの足となる天櫂鳥、しかも風樹専用の天櫂鳥 タカに乗りベランダへと下り立っていたのは彼女と同い年の、よく見知った少年だった。
 風樹と同じく明るい茶色の髪に、僅かに緑を含んだ茶色の瞳。しかし、彼は乾翠族出身ではなく、その配下の一族の内の一つ、戌華じゅっか族王の弟であり、幼少期から風樹の遊び仲間であった少年 剛ごうだった。
 そして、風樹自らの口からは恥ずかしくてどうしても言えないのだが、彼は彼女の恋人でもあった。
「あっれ~? どうしたのー、剛。こんな朝っぱらから」
「いいから、ちょっとこっち来いよ」
 寝起きでトロンとなりがちな瞳を擦りつつ、風樹が剛に問うと、彼はヒラヒラと手招いてきた。その仕種に風樹は首を傾げた。
 確かに剛は突然部屋に遊びに来たが、まだ風樹が眠っている時間に押しかけてくることはなかった。しかも、いつもはズカズカと部屋まで上がり込んで来るにもかかわらず、何故か今日に限ってはお行儀良く窓の外で風樹を待っているのだ。しかも、タカの背に乗ったまま。
 剛を待たせるのは申し訳ないと思いつつも、礼儀としてせめて顔だけは洗い、風樹は剛に手招かれるまま、彼とタカの側まで駆け寄る。風樹の身長の倍以上も大きなタカの背に乗っている剛を、風樹は見上げる。
「で、来たけど??」
 一体どうしたのだと問うと、剛はニッと口許に笑みを浮かべたあと、
「ほらよ!」
 そう言って、両手を振り上げた。
 その瞬間、
「え!? わぁ・・!」
 一瞬驚いたものの、次に風樹は感嘆の声を上げていた。
 振り上げられた剛の掌中から風樹の上に、ヒラリヒラリと花弁が舞い降りてきたのだ。
 赤、黄色、薄紅、青、紫、色とりどりの花が風樹の頭を撫で、時には飾り付けながら落ちていく。
 その様に風樹が見とれていると、タカの上から、美しい花弁と共に、剛の明るい声が降ってきた。
「誕生日、おめでとう!! 風樹」
 その言葉に、風樹は弾かれたように剛を見上げる。
 ヒラヒラと降り注いでくる花弁の向こうに、満面の笑みを浮かべ自分を見つめている剛の姿が見えた。



『天界風月伝』より



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