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「あれは確か中学三年生の夏・・・。突然水日が、まるで握手を求めるかのように、私に手を差し出してきたのです」
「うんうん」
 遠い目をして語り始めた火陵の言葉を、風樹は真剣に聞いている。
「それで思わず握った私もバカだった。ヤバイって思って時には時既に遅し。水日は私の手を強く握ってきた。・・・・・・そう、それはそれは強く!」
「うわッ、痛ッ」
「自分の手の骨が軋むのを聞いたよ、私は。・・・でね、私の手を離した後、水日が聞いてきたわけサ」
「なんて?」
「痛かった? って。そんなの痛いに決まってんじゃん! って涙ながらに訴えた私に、何と水日はこう言った!」
「な・・・、なんて?」
 風樹がごくりとつばを飲む。瞳を伏せ一呼吸置いた火陵は、そのときのことを正確に再現すべく、あの時水日がしたように、可愛らしく胸の前で両の掌を合わせて言った。芸の細かいことに、声の調子も一オクターブほど高くして。
「『良かった。私の握力も、まだまだ衰えてなかったのね、ハート』」
「最後にハートがついてる――――――――ッッ!」
 つっこむべきところが微妙に違うような気がしなくもなかったが、今はそれを指摘するよりも先に、風樹にこの痛みを分かってもらうことのほうが先決だと考えたのか、火陵はなおも言葉を繋ぐ。
「ねッ!? ひどいと思わない!!? 何だって私の手で握力を測るわけ!? 握り潰すんならリンゴでも岩でもドンドンヤッちゃってくださいって感じ! 私の手じゃなく!!」
 リンゴはともかく―リンゴでも、かなりの握力がなければ難しいだろうが―岩は無理だと思うのだが、火陵から言わせてもらえば、あのとき自分の手に込められた水日の力をもってすれば、岩でも何でも片手で握り潰すことが出来そうだと感じられたらしい。そう思わせるほど、痛く、恐ろしかったのだろう。
「ヒドイよね!? そう思うでしょ?」
「思う! 思うよッ!」
 ウッウッと、涙を拭う振りをしながら風樹が応じる。そして、気丈な様子でその涙をこらえた風樹は、火陵を真っ直ぐに見つめて言った。
「水日の怪力に苦しめられていたのは、あたしだけじゃなかったのね、火陵!」
「そうだよ、風樹!」
 ガシッと、手を握りあう二人。今ここに、被害者同盟(?)が結ばれたのだった。


『天界燈火伝-魂の行く先-』より



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