+シャツ・アンド・パンツ+





「アトワイト、君さあ……。」

思わず溜め息が零れる。
何だろう、この男らしさは。
いや、男らしいっていうか何ていうか……。

「もう少し恥じらいとかないの?」
「あら、いいじゃない。別に。」

アトワイトは丁度風呂上がり。
そして、今の格好はTシャツとパンツ一枚。
人前で、流石に、それってどうよ。

「誰が見てる訳でもないし。」
「僕がいるんですけどー?」

ここはアトワイトの自室で時間も真夜中なのだから、僕がとやかく言う事じゃないかもしれないけど、流石にブラジャーくらいは着けて欲しい所だ。
アトワイトは鏡台に向かうと、ドライヤーでその豊かな髪を乾かし始めた。

「あら、シャルったら見たかったわけ?」
「冗談! やめてよね、そんな訳ないじゃない。」

全く、怖い事を言うものだ。
アトワイトは確かにスタイルがいい。
それは認めるが、スタイルがよくてもそれを見て嬉しい人と、そうでない人というのはいるものだと思う。
アトワイトは後者だ。

「じゃあ、いいじゃない。」

あっさりとそう言い切ったアトワイトに、思わず溜め息が零れた。

「私の裸なんて見飽きたでしょう。」
「もうちょっと言い方考えてよ……。」
「仕方ないじゃない。私だってシャルの裸なんて見飽きたわよ。」

その言い方だと、過去に何か関係があったかのように聞こえる。

「お風呂に入れてあげなきゃ、貴方一人で頭洗えなかったじゃない。」
「子供の頃の話なんて持ち出さないでよー……。」

髪を乾かし終わったらしいアトワイトが呟く。
長くて美しい銀の髪が、白い指の間をさらさらと零れていった。

「だって、昔は可愛かったのに今はちっとも可愛くないんだもの。」

アトワイトを兄のように慕い、面倒を見られ続けたこの十数年。
云わば、弱みも十数年分握られているという事になる。

……まあ、その分感謝もしているんだけどね。

「シャル、私寝るから。」
「え、ああ、うん分かった。帰る……。」

帰る。
そう言おうとした瞬間、腕を引かれてベッドに放り込まれた。
柔らかな布団の感触に目を丸くする。

「ほら、久しぶりに一緒に寝ましょ。」
「僕は朝になって、皺だらけの昨日と同じ服で君の部屋を出る羽目になるのは嫌なんだけど……。」
「じゃあ、早起きなさい。」

早朝に出てはますます誤解を生むだろうに……。

「……はあ。もう、仕方ないなあ。」

それでも結局は従ってしまう。
やはり、弟は兄には勝てないものなのだ。



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