+こどもっぽい+





「ふん、ふん、ふふーん。」

鼻歌を歌いながら、ぴょこぴょこと上下するピンクのふわふわ頭。
ステップを踏む小さな足は、履いているだけで足の痛くなりそうなヒールのブーツで、それでも彼女は楽しそうに飛び跳ねていた。

「ご機嫌ですね、ハロルド博士。」

それを見て、思わず声をかけた。
くるりとこちらを振り向くハロルド博士。
目が活き活きと輝いている。

「あら、シャルティエ。やっぱり分かるー?」
「何かいい事でもあったんですか?」

良くぞ聞いてくれたと言わんばかりの表情でふんぞり返って……いや、博士は実際に良くぞ聞いてくれたと前置きをぶったのだけれど。
とにかく、博士は堰を切ったように喋りだした。

「よくぞ聞いてくれたわ、シャルティエ! ベルセリウムの同調性と親和性を活かして、ソーディアンの強化を図れるんじゃないかって思いついたの。って事は情報の伝達速度が加速度的に上昇するから回路に掛かる負担が減って、結果的にその分の情報処理スペースが生まれるから昌術の威力が飛躍的に…………。」

僕には分からない専門的な用語でぺらぺらと並べ立てるのは、どうやら研究の新しい構想らしかった。
恐らくディムロス中将や、カーレル中将なら分かるのだろうけれど、僕には何が何だかさっぱりだ。
しかし、分からないなりに僕は首を振って頷いた。

だって、ハロルド博士が本当に嬉しそうに話すから。

「……ってワケよ! どう!? 素晴らしいでしょ!!」
「ええ、流石ハロルド博士ですね。」
「でしょー! もう、さっすが私ってカンジ!」

ひとしきり嬉しそうに飛び跳ねた後、ハロルド博士がその小さな掌を伸ばして僕の頭をぽんぽんと撫でた。

「は、ハロルド博士……?」
「いい子ねー、シャルティエは。」

突然の事に驚く僕に、朱の載った唇でニコリと微笑んでハロルド博士が呟いた。

「分かりもしない話、ちゃんと聞いてくれてありがとね。」

どうやら見透かされていたらしい。
恥ずかしくて、思わず赤面してしまう。

「さーて、私は兄貴に自慢してくるから。まったねーシャルティエ!」

ハロルド博士はそう言うと、白衣を靡かせてラディスロウの廊下を騒がしくもばたばたと駆けていった。

「うう……。」

身体的には僕よりも随分と小さな博士は、それでも僕より随分と大人だ。
子ども扱いされてしまった事を恥じながら、まだ赤いだろう耳をそっと押さえる。

「あー、もー、ハロルド博士のばか……!」

本人に聞かれたら、「私はばかじゃないわよ!」と怒られるのに決まっているが僕はそう言って、その場にしゃがみこむのだった。



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