「ったく。冗談じゃねーっつの!」
人気のない裏庭で一服しようと、土方は煙草に火を点ける。
総悟の悪ふざけのお陰で、屯所のどこにいても背後を狙われる毎日。
ことのきっかけは、数日前に遡る。
1日局長の騒動が終わった後、暫く真選組の間で密かに話題になったことがある。
曰く。『副長にジャーマンスープレックスをかけられる沖田隊長ってすごくね?』
正直、土方と沖田の体格は縦にも横にも土方の方がでかい。一回りはでかい。と、言うことは土方より沖田の方が体重も負けているということで。
そんな話を沖田本人に聞かれたものだから、話はとんでもない方向に行ってしまった。
「こんな体型の俺ができることが、おめーらにできねぇことはないだろィ。暫く土方さん使って特訓でもしたら良いでさァ」
そんなわけで、真選組の間では特訓と称して、誰が土方にプロレス技を仕掛けられるかというある種の嫌がらせが流行したのだった。
それでも副長の肩書きは伊達ではなく、成功した隊士はいまだ一人としておらず。
「簡単に背後取らせるかよ」
そう呟いて、長い息を吐いたところで後ろから軽い衝撃を感じた。
「………。総悟か?」
首を捻って背後を窺うと、見慣れた枯れ草色の髪が見えた。土方の前に回された腕はがっちりホールドをするようにぎゅっとしがみついている。
なんと言うか。
技を仕掛けるというより
甘えているような態度。
土方は、ひとつ溜息を吐くと名残惜しげに煙草を携帯灰皿に押し込んだ。
「どうした?、総悟」
前に回された白い手に、自分の手のひらを重ねれば、今度はその手さえも捕らわれてしまう。
「つまんねーでさァ」
「何がだよ?」
俺は、お前のお陰で気を張り詰めた有意義な毎日が送れてるけどな、とぼやけば、くぐもった声がそうじゃなくてと返ってくる。
「簡単に背後取られるかと思ったら、そーでもないし」
「そりゃあ、副長だからな。下手な真似できねーだろ?」
「じゃあ、何で俺には簡単に背後取らせるんですかィ?」
いよいよ土方は大きな溜息を吐きたくなって、空を見上げる。
「何なの、ソレ?。お前は、俺にどうして欲しいんだよ」
まだホールドされていない左手で、総悟の腕をポンポンと叩けば、その腕の持ち主は何も言わず。その代わり土方の肩甲骨の辺りで何かを擦っている感触が起きる。恐らく、総悟がおでこを擦り付けているんだろう。
彼自身も、どうすれば良いのか戸惑っているのかもしれない。そう判断して、土方は彼の気が済むまで付き合ってやることにした。 |
お題「後ろから抱きしめる」
良かったら、続きをどうぞv。
|