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お品書きはGS志波甲子園ネタ(天地「夏の終わり」のif) TOVレイヴン「震える月」のエピローグ 
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TOVレイヴン 「震える月」エピローグ





「本当に、いいの?」
「決めたの」

 例のレポートの束、レイヴンが手からぱっと離すと術式が広がる。見る間に紙の束は燃え上がり、一瞬で灰になった。
 ふっと私は力を抜き、床に広がった輝く術式も消え去る。火を扱った簡単な魔術だった。

 帰らないと決め、決心が揺るぐことの無いよう、レポートを燃やそうと提案したのは私自身だった。レイヴンは何かと理由をつけて反対してくれたけれども、私の意志の固さに根負けしたように、「それなら立ち会う」と言ってくれた。
 それでもちゃんと尋ねてくれた。
 その気遣いが本当に心に染み込むようだと、思った。

 きっと、これから先、私は生まれて、25年間を過ごした世界のことを忘れることなんてない。思い出して恋しくなることもあるのだろう。
 そのときはどうしたらいいんだろう、と正直なところ不安にもなる。
 けれども、あちらに帰ったところですんなりと元通りに戻れる訳がない。普通じゃない、人生でそうそうある訳のない経験をしこたまして、これ以上愛せないぐらい人を好きになって、かけがえのない仲間のことを全て忘れて生きるだなんて、到底私の頭の中では想像もつかなかった。
 だから後悔はちっともしていない。



 隣に佇むレイヴンをちらりと伺うと、じっとレポートを放したままの手を見つめていた。もしかしたら彼の方が後悔しているのかもしれない。私を引き止めた罪の意識を感じて。
 そっと私は彼の羽織をひっぱった。そんな顔をしないでほしい、という精一杯の意思表示だ。それに気付いたのか、ようやく彼はすこし笑顔を見せた。

「俺様、責任感とは無縁の存在だって自分でも思ってるんだけどね」
「うん?」

 唐突な話に私は聞く姿勢を見せた。お互い見合うように正面を向き合う。羽織から手を放すと、すかさずその手はレイヴンに掠め取られた。両手で私の手を重ねるように握られ、すこし心臓が高鳴る。

「引き止めた責任は負おうと思ってるわけ」
「ふふ、責任、取ってくれるんだ?」
「俺様もいい歳だしね、そろそろ落ち着いたほうがいんじゃねーのってよく言われるし」
「…………うん」

 話の展開になぜか眩暈がしそうになってきた。
 ふと、触れられていた手に冷たい感触を感じる。

「え?ちょっ、これ……え?何?え?」
「一緒になろう」

 私はもう声すらも出なかった。
 握られていた左手をそっと放して目の前に持ち上げる。薬指に細く白銀色に輝く指輪が嵌められていて、私はもう片方の手で口元を押さえた。

 頭の中が真っ白になる、ってこういうときに使う言葉なのだと思う。何も考えられなかった。どうして、とか私でいいの、とか色々聞きたい言葉はあったけれど、それが口にまで上らず、胸の中でぐるぐると回って溶け合っている。

「やだ、泣くほど嬉しいの?おっさんそんな喜んでくれるなんて感激よ」
「……!」
 知らず、目の淵に盛り上がってきていた涙は、頷くと同時にひとつ零れた。冗談まじりで言うレイヴンの顔もとっても笑顔で、私はたまらず抱きつく。
「ちょ、ちょっと……。ねえ、まだ返事、聞いてないんだけど?待ちぼうけくらわすつもり?」
 顔をレイヴンの胸に埋めると、やっぱり日向の匂い。大好きな匂いだった。
「嬉しい……。本当にいいの?」
「だって、愛しちゃってるからさ」
 いつものような軽い物言いに私はたまらず噴出した。「もう!こんなときまで!」彼も明るく笑う声が聞こえた。



 いつか聞かせてもらった、エステルを攫ったときの話。シュヴァーンとして生きてきたときの話、人魔戦争の話、貴族として生を受けた話、故郷はもう、無いという話。
 全て聞き終えて、私は泣かずにはいれなかった。
 泣くこともしなかった、レイヴンの代わりになれるのなら、いくらでも涙を流そうと思った。

「エステル嬢ちゃんもね、泣いてくれた。こんな俺のこと、許すって。あんな酷いことしたのにだよ。その時に、俺はこの姫を護らないといけないなって思ったんだ」
 その気持ちが痛いほどよく分かった。
 私も同じだ。
 その時にこの人を支えたいって心の底から思った。



 抱きついた私を優しく受け止めてくれた、その腕は温かい。
 嬉しくて、やっぱりまた泣きそうになった。








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