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短編連載小説を載せてみました!
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「寒……」

人気まばらな駅前。
手をこすりあわせ、はぁっと息を吹きかけた。
でも、それじゃあちっとも温かくならない。

朝早くから降り出した雪は、順調に積もり、昼を過ぎた今は軽く10cmは超えているだろうか。
目の前にある、まだ踏まれていない新雪に足跡をつけてみる。
ふわりと柔らかく、そこには私の足跡だけが残った。

(昔は、雪だるまぐらい作ろうっていうぐらいの気分にはなったんだけどなあ)

とりあえず寒い。
早く、暖かい場所に行きたい。

(だいたい、13時に待ち合わせって言ったのはあの人なのに……遅れるってどういうつもりよ)

腕時計は13時10分を指していた。
いつもなら許容範囲だけれど、今日ばかりは少し腹立たしく思ってしまう。

(もう帰ってやろうかな……)

腹立たしさ紛れにそんなことを考えたとき……。

「今日は、よく降りますね」

隣……私より少し高い位置から声が降ってきた。
見ると、スーツ姿の若い男性が、雪降る空を見上げていた。

(今のって、私に話しかけたんだよ……ね?)

「そ、そうですね。いつになったらやむんだろう……」
「雪は嫌いではないのですが、こうも降られると、少し、気が滅入ります」
「明日になったら道とか凍っちゃうのかな……」
「ああ、それは困りますね」

他愛もない会話。
この人も誰かを待っているのだろうか。
でも、そんな空気はなかった。

「そうだ。よかったらこれをどうぞ」

男性が差し出してくれたのは、温かいペットボトルのお茶だった。

「私に、ですか?」
「安心してください。飲みかけとかではありませんから」
「それは分かっているんですけど……どうして?」
「寒いと顔が強張りますから。眉間に寄った皺もそのまま固まってしまいますよ」

言われてハッと眉間に指を当てた。

(確かにずっと皺寄ったままだったかも……)

「恋人を待っているのに、そんな顔をしていては、悲しい思いをさせてしまいますよ」
「そうですね……って、どうして私が恋人を待っているって分かったんですか?」

男性は答えず、柔らかな笑みを浮かべた。

(なんだろう、不思議な人……)

「おや、来たようですよ、待ち人が」

遠くから駆けてくる、時間にルーズな恋人の姿が見えた。

「ああ、もう、走らなくていいからっ! 転んだらどうすんの!」

思わず大きな声をあげてしまってから、ハッとして、男性のほうを見る。

(恥ずかし……)

「仲良しなんですね」
「……腐れ縁なだけです」

そう言うと男性はどこか楽しそうに笑った。

(春のお日様みたいな笑い方をする人だなあ……)

「では、私はこれで……良い雪の日を」
「あ、お茶ありが……」

お礼を言おうとして、男性のほうを向き、私は言葉を失う。

(消え…た……?)

辺りを見回すけど、それらしき人の姿はない。

「ごめん! 遅れて!!」

私の思考をぶった切るように、恋人の声が響く。

「……なんだ? 何キョロキョロしてんだ?」
「ねえ……私、雪の精に会ったかも……」
「はあぁ?」

心底、馬鹿にしたような声が響いたけど、気にしない。

「それより、早く昼飯食いに行こうぜ。腹減った!」
「うん……」

一本の傘を二人で使う。
遅刻されたことに対する苛立ちは不思議となかった。

(あの人のおかげかな……)

私の胸の奥は、ぽわんと火が灯ったように暖かだった。




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