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短編小説を載せてみました。
不定期更新ですが、時折、気にかけていただければ嬉しいです!
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間に合ったぁ…。
電車に飛び乗った私は小さく呟いた。
それから、呼吸を整えつつ、車内を見回す。
(いた…)
彼の姿を確認してから、私はいつもの座席に座った。
彼はいつものように本を読んでいた。
何を読んでるんだろう…。
彼の隣の座席は空いていたけれど、そこに座る勇気はない。
次の駅に着くまでの4分間。
私は彼を見つめる。
何歳ぐらいだろう。
肌の感じでそれなりに年齢は重ねている気がした。
アイロンされたシャツ。
自分でやっているんだろうか。
この人なら、アイロンも似合いそうな気がした。
それともお母さん?
彼女? …奥さん?
そのとき、ふっと彼が視線を上げた。
それから、私を、一瞬、見た気がした。
体がカッと熱くなった。
何事もなかったように…いや、実際何もなかったのだけど。私が過剰に意識しただけで。
電車が止まる。
彼が立ち上がる。
本を持つ手が好きだ。
骨ばった手。
その手を一度でいいから握ってみたい…。
そんなことを考えながら、私は今日も彼の後ろ姿を見送る。
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