ヽ(゚ゥ゚*)ノ@
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とある戦場に、若い兵隊さんがいました。

兵隊さんといっても、学も無ければ戦いに赴く大義も目的もなく、
自分が何の為に戦っているのかにも、大して興味のない兵隊さんでした。

ある日、兵隊さんは、住む人のすっかり逃げ出してしまった街に、猫がいるのを見つけました。
持っていたビスケットを割って投げてやると、猫はそれを拾い、黙って去っていきました。

それから、兵隊さんは猫とたびたび会うようになりました。
会う度、ビスケットをやる度に、猫は兵隊さんの近くに来るようになって、
やがて猫は、兵隊さんの隣で丸くなり、日向ぼっこをするようになりました。

兵隊さんは猫に、よく故郷の話をしました。
荒れて、貧しい土地であること。弟と妹がたくさん、年老いた父母と、より年を取った祖父がいること。
幼い頃から畑を耕していたこと。兵役が終われば、また元のような暮らしに戻ること。

お前も、一緒に来るか?
兵隊さんは一度だけ尋ねましたが、猫は返事をしませんでした。



ある日。兵隊さんは、子供を見つけました。

色の黒い、痩せた子供です。目だけが大きく、兵隊さんを睨みつけています。
兵隊さんは、動くことができませんでした。
子供がこんな所にいたからでも、その子供があまりにも痩せていたからでもありません。
子供の小さな手に銃が握られていて、その銃口が、既にこちらに向いていたからでした。



兵隊さんが目を開けると、子供はいませんでした。

周りからざわざわと音がしていますが、はっきりと聞き取ることはできません。
その音も耳鳴りに混じり、ゆっくりと聞こえなくなっていきます。

兵隊さんは、猫のことを思い出しました。
あの猫は、まだ待っているのでしょうか。
たった一匹で、お腹を空かせていないでしょうかと。

ちゃんと会いに行ってやらなければと、
兵隊さんはなんとか手を動かして、ポケットに入ったままの、粉々になってしまったビスケットの包みを握り締めます。


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「猫と兵隊さん」




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