副隊長浦原×隊長一護 その5


 愛らしい顔をしていると思う。
 無愛想でいつも眉間に皺を寄せていて、随分と男らしい言葉遣いをしていてそれに見合うほどの実力を有していて。
 それでも、たまに見せる零れるような笑顔や、子供らしい仕草は、浦原の庇護欲をそそる。

「あのー…」

 無視。

「アタシ、手伝いましょうか?」

 やっぱり無視だ。
 三席がちらちらと様子をうかがい見上げて来るのが何とも、自分が不憫なようで腹立たしい。

「冗談じゃねえ…」

 執務室に缶詰状態の隊長様は、浦原なんて居ないもののように書面に向き合っている。
 うう、とか。
 ああ、とか。
 よく分からない呻き声を上げて書類と睨めっこ中。

「どうかしたんですか?」

 一角は流石に面を上げて、一護に近寄り同じく書類を覗き込む。
 その様はまさに副隊長のようだ。
 副隊長は自分なのに。

「"そろそろ身を固めてはどうかと思っての。何人か見繕っておいたぞ。写真を送る。めぼしい相手を見つけて見合いをせよ。これは命令じゃ。りとぅんばい総隊長"」

 確かに見かけは15,6の少女とはいえ、数百年は生きている一護だ。
 一個隊の隊長を任されるぐらいの女傑であるし、そんな話が持ち上がっていても不思議ではない。

 浦原はその書類、いや手紙の下にあるいくつかの見合い写真と思われる袋を見た。

「あのくそジジィ」

 一護をまるで孫のように可愛がる山本は、一護が行かず後家になることを懸念しているらしい。
 命令、という以上一護は断れない。
 それも、総隊長という名前で通達してきたのだからなおさら。

「どうせ貴族のボンボンばっかだろ。俺、嫌だ。お前代わりに受けてくれ」
「俺は男ですから…」

 ため息を漏らし、ふと顔を上げた一角と、視線を交わす。
 いや、睨み付けてやった。
 離 れ ろ という言葉を視線に乗せる。

 彼は、外では犬猿の仲と囁かれる隊長に対し、自分がよこしまな感情を抱いているのだと気づいている。
 だから遠慮無く、目の敵にしてやっている。

「どいつもこいつも一緒だ。面倒くせえ」

 そう言いながら一護は床に袋に入ったままの見合い写真を神経衰弱の要領で並べていく。
 何をするつもりだろうか。

「この中から結婚しろなんて言ってねえしな。適当に見合いすりゃ良いんだよ。で、断れば良いんだからな」

 うーん、と悩んだ末。
 一護は左から三番目の袋を取った。

「さて、どいつだ〜」

 見た目と変わらぬ、幼稚さを持って。
 鼻歌を歌いながら一護はその見合い写真を取り出した。
 そして止まる。

「……… 何でお前の写真なんだ」

 え?、と。
 存在に気づいていたんじゃないか、とこっそり悪態付きながら浦原はその写真を覗き込んだ。
 確かに、自分の写真だ。

「と言われましても」
「止めだ止め。もう一回引き直すぞ」

 突き返してきた写真を、浦原はつい反射的に受け取った。

「待って下さい!お見合い、適当なんでしょ?だったらアタシでも良いじゃないですかっ」
「どこに、自分の部下と見合いするバカが居るってんだ」

 貴族のボンボンこと浦原はその写真を再び一護に差し出す。
 いらねえ、と返されて、押したり引いたり。

「だったらアタシと結婚して下さい」

 は?
 ぐいぐいと押し返すその手が止まった。

「そうしたら総隊長も何も言いませんし、アタシもアナタと結婚できるし良いことだらけです」

 バシンと。
 お見合い写真で頭を叩かれた。
 身長がだいぶ違うから、背伸びをして。
 その姿が、ああ可愛い、なんて言っていられないほどの激痛だ。
 けれど、副隊長としての矜持も惚れた女の前という面子もあって、どうにか耐えた。

「誰がお前と結婚するか」
「そ、じゃあお見合いはしてくれるんスね。これ持って行きますから」

 状況の飲み込めない一護から、強引に写真を奪い取って。
 浦原は瞬歩を使ってその場を去った。
 ようやく一護が理解したときは既に時遅し。
 浦原の姿は見えないどころか、霊圧さえも感じ取れない。

「…〜ッ嫌がらせか!これは嫌がらせなのか?!」

 奥歯を噛み締めて、一護は一角の襟首を握り強く揺さぶった。
 あまりに強く揺さぶられ、半分意識が何処かへ行くのを感じ取りながら、一角は、流石に浦原は不憫だと思った。



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