悠遠夜話・番外編『麒麟御伽草子』その一

!!ご注意!!
このお話は「悠遠夜話」設定のお話になります。
すでにUP済みの悠遠夜話・番外編~成瀬さんのお話~の続編にあたります。
☆成瀬さん→麒麟(仙人)
☆啓太→きこり
という完全パラレルになりますので
「ふふん!!なんでもOK!ばっちこーーーい!!」なお嬢様のみ
お進みくださるようお願い申し上げます。





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あるところに深い深い森がありました。
あまりも暗く鬱蒼とした森でしたので、周りの村人はひどく気味悪がって
滅多な事では近づこうとはいたしませんでした。
そのお蔭か森は荒らされることなく、驚くほど静かでとても豊かな森でありました。

深い深いその森の奥。
そこには若いきこりがたった一人で住んでおりました。
きこりの名は啓太といいました。

森の中でひっそりと一人暮らす啓太でしたが、
それを寂しいと思うことはあまりありませんでした。
何故なら森の中にはたくさんの動物たちが住んでいて、
みな、この心優しいきこりの事が大好きでしたので、
啓太の傍にはいつもたくさんの動物たちが集まっておりました。

和らかな木漏れ日が落ちる森では、小鳥が唄を歌い、
リスやウサギたちが可愛らしく戯れて啓太の周りを駆け回ります。
そんな動物たちの様子に目を細めながら啓太は、今日も元気に斧を振るのでした。

啓太はきこりです。
森を育て、守り、共に生きることが仕事でした。
いつも夜明けとともに起き、朝早くから夕方まで一生懸命働きます。

「きこり」というとどうしても筋骨隆々むっきむき。
すぐに髭もじゃの無骨な山男を想像してしまいがちですが、
この啓太という青年は全く違っていました。

毎日眩しい日の光を浴び、汗水流して元気に働いているにもかかわらず
その肌は不思議なことに一向に日に焼ける事はなく
しっとりと白く細かな肌理を保ったままです。
小さく瑞々しい唇はまるで朱色の野の花のように可憐でしたし、
くるくると可愛らしく、よく動く大きなその瞳は晴れた空色の青でした。

すらりと若木のように伸び伸びとした啓太の肢体には
無骨な筋肉など見当たらず、彼が肉体労働を生業としている事など
忘れてしまいそうでした。

その上、強引に押さえつけたくなってしまいそうな細い腰も、
ついついしゃぶり付きたくなってしまいそうな白い項も
啓太の身体を構築する全ては酷くあやうげで、やたらと牡の嗜虐心を煽るものだったのです。

そしてそれは固く結んだ蕾が、身を震わせて大輪の花を咲かせるように
齢を重ねるごとにますます可憐に美しく成長していくのでした。

そんな危険ともいえる性的な魅力を、むんむん垂れ流しの啓太の身体が
未だ誰にも汚されることなく、清らかなままでいられたのは
もはや奇跡としか言いようがありませんでした。
それはきっと啓太が、この森に深く深く愛されて
大切に護られていたからに違い無いのでしょう。


だけれど、そんな啓太の静かな生活に小さな変化が現れたのは、
つい数日前の出来事なのでした。


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あまい・・・あまい匂いがする・・・
ああダメだ。とても我慢ができないよ・・・。

「・・・さん・・・・」

ああ・・・君は・・・その声さえも甘く麗しい・・・。

「成瀬さん!!・・・だいじょうぶですか??」

「!!」

ゆさゆさと小さく左肩を揺さぶられて、成瀬と呼ばれたその男ははっと目を開けました。
男のその目に飛び込んできたのは、いつも見慣れた華美で豪奢な天蓋ではなく、
古びた丸太で出来た簡素な天井でした。

「あの・・・ホントに大丈夫ですか??」

視界の端にそっと入り込んできたその人は、
小さく眉根を寄せて酷く不安そうに自分を見つめています。

一瞬、ふわふわと柔らかな茶色のくせ毛がまるで雛鳥のように見えて、
その可愛らしさに思わず、引き寄せて口づけをしてしまいたくなりましたが、
どうにかそれは寸での所でやり過ごされたようです。

「あ・・・うん。・・・だいじょうぶ・・・だいじょうぶだよ・・・」

一体、何に対して大丈夫といったのか大変に怪しいところでしたが、
男が未だ、己の欲望に忠実に従おうとするワキワキとした右手をこれまた、
己の左手がぎりぎりと強引に押さえつけた頃には、
どうにかその瞳の中に浮かんだどす黒い色も和らいでいて
振り向いた啓太が、それを見つける事はありませんでした。

「あまり、無理をしちゃだめですよ?まだ体を休めなくちゃ。」

「・・・ふふ。ありがと。啓太は本当に優しいんだね。」

「そんなの当然じゃないですか。だって成瀬さん倒れてたんですよ??」

「・・・うん。そうだね。あの時、君が見つけてくれなかったら・・
僕は今頃どうなっていたか・・・本当に啓太は命の恩人だよ!」

ふうわり、と啓太に優しく笑いかけた男の長い髪がさらりと肩口に落ちてきます。
それは、光を反射してまるで金糸のようにキラキラと輝くのでした。

男の顔立ちもそれはそれは美しく整い、均整の取れた肢体と相まって完璧な彫像のようです。
その上 強い光を宿すその瞳は、盛夏の新緑を切り取った緑柱石のような美しさで
男の容姿をこれでもかと言うほど魅力的にしているのでした。



啓太が拾ったこの男は「成瀬由紀彦」と名乗りました。
薬の行商を生業にして様々な街を旅している途中山賊に会い、
身ぐるみを剥されてもう何日もこの深い森に迷い、
腹を空かせて倒れてしまっていたところを、通りかかった啓太に助けられたという訳です。

成瀬が啓太に助けられて今日で3日目。
どうやらその体は順調に回復しているようでした。

「はい。これどうぞ?今日は柔らかいご飯に少し具を入れて見ました。
おかゆにもそろそろあきたころでしょうから・・・。」

「わ・・・ありがとう。とってもいい匂いだね・・・。」

男は啓太に自分の事を「ごく普通の商人」と言いました。
ですが、椀を受け取るために伸ばされた成瀬の指は白く長く上品で
到底、労働を知った手には思えません。
おまけに食事を口へ運ぶ、そんな所作さえもどことなく優雅でいちいち気品がダダ漏れです。

美しく上品な顔立ちに、薄汚れた衣を纏っているその姿はかなり無理やり感たっぷりで、
チグハグな印象しか無く、誰がどう見ても
男が自己申告する「行商を生業としている旅商人」からは
少し・・・いや、あまりにかけ離れて見えました。

ですがこの深い森に住まうのは啓太ただ一人なのです。
天使のように純粋な啓太は人を疑うという事を知りません。
男の緑柱石のように美しい瞳の中に時折、
妖しげな光が見え隠れしている事になんて気が付きもせず、
成瀬の身を心から案じて甲斐甲斐しく世話を焼くのでした。

わーわー
啓太君逃げてええええ



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