「ぼーんっ!」
「何や志摩」

志摩に呼ばれて勝呂は振り返る。一体どうしたんや?と勝呂は首を傾げた。

「Do you Ryuzi, to be your wife, to have and to hold from this time forward: for better or for worse, for richer or for poorer, in sickness and in health, to love and to cherish, for as long as you both shall live? If so answer. "I do."」
「は?」


口を開けば流暢にペラペラと謎の英文。恐らく、暗唱しているのだろう。スムーズに言葉が紡がれていく。確かに現在高校生だが、いきなりの英語(しかも志摩の口から)に目を丸くする。

(てか、そんなん覚える暇あるんなら、経典のひとつでも覚えんかい!)

尤も過ぎる考えである。

「Please say "Yes" . 」

言い終わったかと思えば志摩は勝呂の返答を待ってるらしく、じっと見つめてくる。とりあえず何かを返さなくてはいけない。この場合だと志摩が求めている返答は「イエス」なのだが。

「あー。…Yes,I do.」

仕方ない。溜息をついてから志摩が求める返答を返してやる。
するとどうだろうか。志摩の表情が見る見るうちに明るくなっていく。

「イエス!イエス言いはりましたね!意味わからんでも、言ったらもう決定ですからねー!」

漫画表現よろしく、ひゃっほーい!と飛び上がらんばかりの勢いで、志摩はそのまま走り去って行く。その後姿を見て、勝呂は再度溜息をついた。

「…阿呆かあいつは。あないな定型文になっとる英文くらいわかるわ」

その言葉が意味することも、そして勝呂が微かに笑っていたのを、志摩は知らない。




「はい、誓います」


(その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか)





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