大晦日~新年小話

ずるずるについて

※一度王宮に帰った時の一コマとして読んでいただけたら幸いです。

何ヶ月かの旅の間にこういうこともあったのだろうなということで!

一応、アンケートのこのあたりのお話です。ひざまくらにしても、もう一つにしても、もうちょっとは話がすすまないと公開できない気がするので!

・町民C、華の姫様の美容教室を受講する

・町民Cの平凡なる日常  の2点あたりにかする小話です。

長いので3話に分けました。



1

 顔に色々塗られています……。
「次は肌を整えます」
 ものすごくやわらかいブラシを持った美人のお姉さんが私にずずいと近づいてきます。
 うお、近い近い近い近い!
 こんなに顔に接近されるのって、慣れていないんですがっ。
 居たたまれなくなって反射的に目をつぶるよ!
 目を閉じたまま肌に感じる人の気配に、全身トリハダがたつ。目を閉じたらいけなかったかな! 選択を間違えた!?
 それを横で見学していた華の姫様が軽やかに声を掛けた。
「うふふ、神子様、御希望の色はありまして? もしくは雰囲気とか」
「い、色ですか?」
もう何がなんだかわからないまま私は硬直しています。

 どうしてこうなった。

 ちょっと前のことを振り返ります。ああ、お二人についていけばよかったなー……。


  主神殿にどうしてもはずせない用事があるとかで神官様が里帰り? をすることになりました。
 申し訳ないですとこめかみをグリグリさせている神官様を見ていたら、こっちの方が申し訳なくなるよ! だって私、基本枝だけ持ってぼんやりしていますから……。お二人の行くところに、陸馬さんと一緒についていくだけだしね。

  と言うわけで帰ってきました主神殿! 
 だったんだけど、お二人が国王様への謁見にいってくるというので、快く見送りました!
 王宮は主神殿の隣だしね! 行かなきゃ行けないのもわかる。
 でも。
 一緒に行くのは無理! 謁見の手順とか記憶するの無理!
 アレって結構面倒なんですよ! お月の人が口上を述べている間の待機姿勢とか、紹介されてから頭を上げるとか、言葉をやり取りする時の注意事項とか! メガネ女史に前教わったけど、半日で私は駄目だった! 今回も、
「一緒に行きますか? どうしますか?」
って事前に神官様が聞いてくださったけど、私は元気いっぱいに、
「いってらっしゃい! 気をつけてくださいね!」
と返答しました。つまり行くわけがない。
「そんな敵地に向かうわけでもないのに……ある意味敵地ではありますが」
「知らない人は部屋に通すな」
と言い置いていかれました。どちらがどちらのセリフかって言うのはよくわかるね! というかここは敵地ですかっ。なんでっ。

  とりあえず旅の汚れを落として、侍従さんに紅茶とお菓子をいただいて一心不乱に消費をしていると、知っている人が来たので部屋に通しました。いや、知っている人だし……通さないわけにはいかなかったんですよ! 姫様だしね!
「あら神子様お久しぶりですこと! 勇者様はこちらに帰っていらっしゃいまして?」
一応、挨拶はしてもらえるらしいです。二言目には勇者様ネタを振ってくるのは相変わらずの安定感でした。うん。姫様はニコニコしながら私の向かいの席に座ります。相変わらずの強引マイペースな姫様です……。
 口の中のものをもぐもぐとして、飲み込んだ後に私はようやく口を開きました。
「国王陛下との謁見中ですので、そのうちお戻りになると思いますよ」
「あら、そうなの」
意外とあっさりとした返事だったので、私は首を傾げた。前はもうちょっと食いついてきていたような気がするんだけどっ。姫様は扇を広げて口元を隠しながら、
「ところで神子様、神子様はあまりお化粧なさらないみたいですけれど、興味はございませんこと?」
と言い出した。
 へ? と固まる私に、姫様は手をすっと伸ばして頬に触れてくる。
 ぎゃああああ! 白い指はなんか凄くいいにおいがしますよ。こ、これがお姫様の香り! そりゃあ魅惑されちゃうよねっ。
 その白い指で私の頬をすっとなぞった後、姫様の眼光が鋭くなった。
「星別者とはいえ、お肌のお手入れは重要ですのよ? あの方々は男性ですからそこまでは気遣いはないのでしょうね。さ、私のオススメの流行のドレスなどいかが?」
ウフフ……と笑う姫様に、私が逆らえるはずがないじゃないですかああああああ!

 そして冒頭に至るのでした!




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