あなたの好きな食べ物は?




 午後四時。銀時は出かけたまま、まだ帰ってこない。
 新八は、今日の晩御飯は何にしようと考えながら、同じく万事屋で留守番中の神楽とお茶を飲んでいた。
 神楽は、テレビの前に座り込んで、奥様に人気のワイドショーに夢中である。
 生中継らしく、画面の右端にはLIVEの文字があった。
 道行く人々に質問を投げかけてゆくインタビュアー。
 質問の内容は、『あなたの好きな食べ物は何ですか?』
『俺は、彼女の作ったビーフシチューかな』
『奥さんの作った肉じゃがだよ』
 男性五十人に聞いてみようという企画らしく、対象は男ばかり。
『彼女の』『奥さんの』を先頭につけて答える者が多く、惚気大会のようにも思えてくるが、気持ちはわからないでもない。
 同じ食べ物でも、作ってくれる人が違うだけで、一味違ったものに感じられることはよくあることだからだ。
 ちょうど晩御飯を何にしようか考え中であった新八は、少しは参考になりはしないだろうかと、テレビを眺める。
 そこへ、よく知る男がインタビュアーにつかまった。
「銀ちゃん!」「銀さん!」
 神楽と声が重なった。
 彼は一体どこにいるのかをリアルタイムで知らされる。
 いちご牛乳の入った買い物袋をぶら下げている銀時は、インタビュアーの声がけに、めんどくさそうに応じ始めた。
 そうして、この質問。
『あなたの好きな食べ物は何ですか?』
 ところが、その質問を投げかけられると、銀時はまんざらでもないような顔をした。
『俺ァ、嫁さんの作った卵かけご飯かな』
 照れくさそうに頭をかきながら、彼はカメラ目線で答える。新八はうっかり落としそうになった湯呑を慌てて手に持ち直した。
 これまでの空気を読んだのか。彼は、先頭に『嫁さんの』をつけて答えたのだ。
「銀さんってば結婚してないのに何言ってるんだろうね。ねェ、神楽ちゃん。……神楽ちゃん?」
 神楽も自分と同じ反応を示しているに違いないと思っていたが、見れば、彼女は頬を赤くし、湯呑をモジモジと撫でている。
 何かが、おかしい。
「……新八、実は――」
 神楽は立ち上がり、隣の部屋へ行くと、一枚の紙を持って戻ってきた。
 四つ折りにされたそれが開かれ、目の前に差し出される。そこには、判を押される前の、とある届出。
 銀時は、空気を読んだわけでも、ましてや嘘をついたわけでもなかったのだ。
「え……えええええええええ?!」
 新八の驚きの声が、かぶき町にこだました。



おわり



<銀神プチオンリー・ポストカードより>


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