安楽死装置

ふう。

キリコは幾度目かのため息をついた。

ネット時代はいやだ。

俺の存在が世間にばれ、社会問題になった挙句、日本は安楽死が合法化されてしまった。

それからだ。

マスコミが俺を喧伝するようになったのは。



いつの間にか俺の料金表がすっぱ抜かれ、

「あなたはどれを選ぶ? 人生の最後を飾るスペシャリテ」

という記事になるは

「人生最後の大勝負! あの天才外科医の出現確率」

と、あいつがどの程度の頻度で現れるかの特集が組まれるは、話題に乗ったドラマができるは、もう大変なのである。

日本人のミーハー根性には恐れ入る。

ま、どうせ半年くらいのブームで終わるんだろうけど。



なんて思っていた俺は馬鹿だった。


ブーム自体は落ち着いたが、依頼人の注文がやたらと多くなったのだ。

それもふざけた注文が。




今までも

「最期は手を握っていて」

と言う依頼人はいた。

死出の旅立ちだ。

不安なのは当たり前だからと手を握り、話しかけながらの施術はそれまでにもあったが、付き添いの家族がその写真を撮ることなど今までになかった。

そんなの死者は見られないじゃないかと思うのだが、それが本人の最期の望みだ。

葬式の時、会葬者に見せて自慢するのだ、と聞いた所で俺は自分の立場を知った。

俺は死のイベント化に一役買ってしまったのだ。




考えてみれば安楽死が合法化された今では病院に意思を伝える、または元気な頃に周囲に言っておけば簡単に安楽死させてもらえる。

俺の出番なんていらないじゃないか。



俺は件の無人島に行き、安楽死装置を爆破した。





もしキリコが安楽死を辞めるとしたら。




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