うちにもイラストを提供してくれてる文人氏への夏の反省文です。
うっかり設定を聞いたら書くことになってたんだ…

イラスト&原案:真鳥 文人氏

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ほむくるっ!①











「ふう……」

朝からのんびりとしたティータイム……休日にだけ許された至福の時間だ。

昨日買ったばかりの小説を片手に良い香りをたてるカップを傾け








ドゴ……ッ……!!!!








「………………………………またか。」


頭上が発信源の爆発音に続いて揺れる部屋、パラパラと落ちる埃……

ティータイムは諦めて本を閉じる。

もう怒りを感じるところなどとうに通り過ぎている。

………が、気になるものは気になる。今度はなんだ、一体。

階段に足をかけてここ最近の居候の奇行を思い返す。

先々月は医学の進歩がどうのとかで部屋の窓を吹き飛ばした。

その修復が終わる前にネクロマンサーの秘術の実験とかで床をホルマリン浸しにして大騒ぎになった。

先月は黒魔術だ!!とか言って天井を焦がしてくれた……

階段の最上段に足をかける。

もう何が起きても僕は驚かない……


「部屋が吹き飛んでない限り、ですが。」


長く続く廊下の角を曲がり問題の部屋の前に立つ。

幸い、扉は残っていた。

中も残っているといいのだけれど。


「入りますよ。」


軽くノックをして扉を開く。

途端にもくもくと出てくる白い煙に視界を塞がれる。


「…………」


この程度なら予想の範疇だ。

煙がこれだけ溜まっていたなら壁に穴は空いていないな、良かった良かった。

と考えるポジティブな自分すらいる。

僕は煙を吸わないように口と鼻を塞ぎ部屋の窓を開け放つ。

近くにあったノートで換気扇代わりに辺りを扇げば視界を埋める白が弱まる。


「げほっ……有毒ガスじゃないでしょうね……」


なにせ、前回のホルマリンのことがある。

ホルムアルデヒドを含む蒸気は人体には有害なものだ。

ここが町の外れで本当に良かった……


「?」


机の影でなにかが動いたのが見えた。

周り込めばぐったりとした金髪が……


「ジョット!?」


慌てて居候のうつ伏せの体をひっくり返す。

まったくなにをしてたんだ、本当に!!

すぐに脈と呼吸を確認する。

………どちらも平常。取り敢えず、大丈夫なようだ。


「…………ん?」


一安心、と思ったところでまた視界の端でなにかが……


「!」


――――目が、合った。

と思った次の瞬間にまさに脱兎の如く「それ」が逃げ出した。


「っと。」

「ぴみゃあ!!」


すぐに捕まえましたが。

瞬発力はあるようですがのたのたしてたので余裕で捕まえられた。

その珍妙な生き物を持ち上げてみる。


「………なんですか、この生き物は。」


短い足をじたばた振り回して無駄な抵抗を繰り返している生物。

モルモット……に似ていますが大きさは猫やうさぎよりは小さい。

耳の形も記憶している愛玩動物のどれとも違う。

体毛は金色だが頭の上の毛が他の毛より長く毛色が違うためまるで髪のように見える。


「みゃ~!!!!みゃう!!」

「………猫、か?」


鳴き声は似てるような……

顎に手をあてて考え込んでいると後ろから伸びてきた手がその生物を持ち上げる。


「つなよしをいじめてくれるな。」

「観察してただけです。」


つなよしと呼ばれた生物は自分を摘み上げた人間を見るとその服に飛びつき頬擦りを始める。

勝手に生き返ったジョットは好きにさせるがままにして首をごきごきと鳴らす。


「はあ……失敗したか……」

「失敗って今度は何をしようとしてたんですか……」

「錬金術の神秘について研究していたんだが……やはり付け焼き刃ではダメか……」

「当たり前でしょう。
毎回毎回それ言ってますが学習能力は正常に機能してますか、あなた。」


付け焼き刃云々は失敗する度に言っているが……

付け焼き刃でどうにかなるものがあるなら教えて欲しい。


「今回はいいところまでいったんだ。」

「最終的に失敗してたら意味はないでしょう。」


部屋には散乱した本、本、本……

更には得体の知れない液体の入ったフラスコ、ビーカー。

一応使えるが現代じゃ電気機器に頼るため埃を被る暖炉にもなにやら怪しい器具が並んでいる。

どこで手に入れたのか不気味な動物の皮やら角やら骨やら……乾燥したカエルやらも吊されている。

何を焚いたのか変な匂いはするし、今の煙のせいか部屋全体が粉っぽい。

今回も片付けるのは大変そうだ……噂が立つのを覚悟で手伝いを呼ぶか。


「はあ……毎度毎度本当に懲りませんねぇ……」

「当然だろう!失われた研究の結果をこの手にするまで止まれる訳がない!」


何故か生き生きと語り始める男。

褒めたんじゃない……呆れてるんだ……

ジョットの服にしがみついたままのつなよしがきょとんとした顔でこちらを見ている。


「お前も知っているだろう。錬金術とは古来より世界中で研究されてきた技術だ。金を精製することが目的と勘違いされがちだがあれは通過点に過ぎない。物質をより完全な存在へと変える、例えるなら金の精というものを抽出し、卑金属を金へと変える。それができるならばその先、そう生命の精の根元を取り出し、金の如き永遠…即ち永遠不滅の不老不死を得られると考えられる。それは即ち、天地創造の過程の」

「ストップ、ストップ。」

「む、なんだ。」


ずい、と箒を彼の手に押し付ける。


「その講釈は手を動かしながらお願いします。」

「……そうだな。」




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