拍手ありがとうございます。以下ホシドリ文(「FirstContact」の続き)です。




年下の素直な彼の台詞
2.「気に入ってもらえてうれしいです」



星野から誕生日プレゼントを貰った。
深い緑色をした、フードが付いたパーカだ。

正直、すごく嬉しいが複雑な心境でもあった。
生地がしっかりとしていて、適当な所で買ったものではないだろうとわかったからだ。
ユースチームに所属するあいつが、バイトなんてしている筈も無い。
勿論犯罪を起こした筈もないのだが、そんなあいつだからこそ、こんなにいい物を貰ってしまって何だか申し訳ない気持ちになってしまっていたのだ。

「ありがとうな、星野。」
「いいえ、どういたしまして」

俺は本当の笑みと、貼り付けた笑み半々を浮かべて礼を言う。
隣に座るそいつは、照れくさそうに笑う。
俺なんかにプレゼントをやって、お前、今に後悔するぞ。
彼女とかできたら、絶対。今はいないらしいが。

そんな俺の心中を知ってか知らずか、俯いた星野がもぞもぞと口を開いた。

「あの、俺、年中ジャージ着てるから、服とか滅多に買わないし・・・・・用途もないから、毎年お年玉も貯金行きで。親はそれで免許取れるって言ったんですけど、俺は・・・緑川さんが喜んでくれたら・・・それが一番の使い道かな、って思って。何かエゴですけど・・・」

だから、喜んでくれてめっちゃよかったっす。

そう言って、こちらを見てにかりと笑った。
瞬間、こいつの好意を何も考えずに受け取れない自分に無性に腹が立った。

「そうか。・・・着てみるよ」

座っていた段差から立ち上がり、パーカのジッパーを開く。
羽織ってみると少し大きめで、パーカとしては丁度良いサイズだった。
チームメイトからはネタTシャツなどの衣類も貰っているが、ユースの子達は勿論、ファン達からのプレゼントに衣類は無かった。
会って。一緒に練習をして。隣に立って、実際の体格が、感覚にすりこまれて。
それはいかに俺達の距離が短いかを示す、指標の様なものの気がする。

「気に入った。本当、こんないい物ありがとうな。」

吹っ切れたら本当にこの贈り物を、星野から貰ったことが嬉しくて、笑みが零れた。
もしかしたら、似たような物を、或いは同じ物を自分で欲しくて買っていたかもしれない。
それでもそれ相応に嬉しくはあるだろうが、やはり、こいつから貰ったことに意味があるんだ。
たぶん、星野がくれたものがこのパーカじゃなくて、もっと別のものでも、この喜びの大きさは変わらないだろう。

「気に入ってもらえてうれしいっす!! よかった・・!」

何も出来ない俺は、それでも嬉しくて、そいつに向かってへへ、と笑った。

お前はさっき、エゴみたいだと言ったけれど。
俺があげられる些細な、素直な言葉だけでお前はこんなにも笑顔を振り撒く。
それを見て俺の胸は何か温かいもので満たされる。
本当に俺は与えられてばかりだ。
お前はお前が思ってるよりもずっと利己的なんかじゃなくて、俺に色んな物を与えてるんだよ。

良くも悪くも、この、抱いたことの無い感情さえ、お前が種を蒔いていったんだ。




*
ドリさん薄っすら気持ちに気付く編です。
何だか会話が不自然ですがそこは仕様で・・・。
ありがとうございました。


お題配布元:確かに恋だった

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