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拍手ありがとうございました。 申し訳程度に過去SSその1 霧廻とキャロル * * * * * 「ねぇ、キリエはコーヒー淹れられないの?」
「……はい?」 きっかけは彼女の些細な一言でした。 「キリエがコーヒーを淹れたところ、見たことないから」 「……左様でございますか」 淹れられないわけではない。単に淹れる機会がないだけだ。 黒鳳院家の者は大抵紅茶派で、この屋敷の中でコーヒーを飲む者は木佐貫くらいしかいない。私は無論紅茶派であり、曽祖父は以外にも梅昆布茶派だった。 ……染井屋の旦那様と葵様は煎茶時々中国茶派だ。 「キリエのコーヒー飲んでみたい!」 「構いませんが、後悔しても知りませんよ?」 何せお嬢様は、私の同級生の勤め先のダメお嬢様程ではないが、甘党なのだ。紅茶に入れる砂糖の量は普通だが、恐らくコーヒーなんて苦すぎて飲めないだろう。 「大丈夫、キリエは絶対ブラックで出さないもの」 「……よくお分かりでいらっしゃる」 ――甘くて苦い、その液体を。 (しかしお嬢様、砂糖とミルクはたっぷり入れてありますが、コーヒーは絶対にやめたほうがいいと思います……) 「……やっぱり紅茶がいい……!!」 (角砂糖5個でも苦いというのだから、なおさらです) |
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