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blue rose
掌に零れ落ちてくるそれを眺めつつ、少女は儚く笑みを漏らして見せた。
きっちりと三つ編みされた、腰より下辺りまである薄い桃色の髪。
そして、それに相応するように澄んだ水の様なサファイアの瞳。
二重に着ている服は、黒のワンピースに白を基調とした上着と、シンプルな服だった。
次いで腕には数種類の腕輪がはめられており、それも彼女の美しさを引き立てていた。
ここはどこかと見回してみれば、辺りには木、木、木。
けれども、森と言って正しいのかは分からなかった。
一方、少女の目の前には、そこには不釣り合いともとれる薔薇。
凛としたその様を見ると、どこか不思議な感じを覚えた。
また、近くには湖があるのだろう。
時々、ぽちゃんという神秘的ともとれる水音が聞こえた。
―――あぁ、このまま堕ちてしまいたい…。
どこか、そんな感覚すら覚えた。
どうしてと聞かれたら答えなど返せないが、何故かそう言う気持ちさえ生まれた。
「…フィーナ。」
「っ!?…しゃ、シャゼル…っ!?」
びくり。突然かけられた声に反応すると、声の主は楽しそうにくくっと笑って見せた。
「ごめんごめん。脅かす気はなかったんだ。」
その台詞が嘘だと言うことは、目に見えていた。
後ろで呆れかえった表情をした青年が、一つの証拠だったりもするのだが…。
声をかけてきた青年の名は、シャゼル。
無造作にあちらこちらに撥ねている金色の髪と、左右色の違う双眸。
右は濃いアメシストで、左はサファイアの色をしている。
こちらも又、フィーナのように白と黒を基調とした服で、腰には細身の剣が提げられていた。
そして後ろにいる青年の名は、ディオ。
シャゼルと対象とも言えよう銀色の髪で、肩以上の長さがあるそれは適当に後ろで結んであった。
ルビーまで行かない朱色の瞳は、どこか知的な印象を与える。
加えて、二人と同じように、白の上下に黒のローブの様な服。
肩からたすき掛けされた鞄は、少し膨らんでいる。
「けど、こんなところで。しかも一人で。…何やってるんだよ?」
紡がれたシャゼルの言うことは、もっともだった。
その言葉に苦笑を漏らすと、フィーナは掌を差し出した。
「…青い薔薇だよ。」
―――掌の中の、青い花弁。
『薔薇ってね、青の色素がないんだって。』
「…薔薇には、青の色素がないはずじゃ…?」
言われて、フィーナは否定するでもなく頷いた。
その様子を見て、シャゼルとディオは、しげしげと掌の中の青い花弁を見つめた。
続いて、フィーナの後ろの薔薇に視線を注ぐ。
はらはらと落ちる、青い花弁。
何を思って散っていくのだろうか。
何を感じて落ちていくのだろうか。
何を魅せて枯れていくのだろうか。
見入るようにして、三人で薔薇を見ていると、
近くでぽちゃんと湖に水滴が落ちる音が聞こえた。
何分、何秒…。…あるいは何時間。
どの位こうしていたのかも分からないし、
じっとこのまま時が過ぎてくれてもかまわないと思った。
沈黙と言うより、静寂。
…美しい。
何よりも、凛としたその薔薇が。
「そう言えば。」
ふいにその静寂を破ったのは、フィーナだった。
どこか儚い表情で、彼女は後ろの二人を見やった。
「…どうして、ここへ…?…何故、ここが分かったの?」
フィーナの言葉に眉をひそめると、シャゼルは親指でディオを指した。
『俺にその言葉を言わせるな。』
…彼の瞳が、それを語っている。
指された本人はと言うと、小さく肩をすくめてみせた。
「俺たち、繋がってるじゃないか。」
胸を指さして低くそう言うと、彼は続けざまに言葉を発した。
「…今回は、それを…ちょっと、利用させて貰っただけさ。」
まったく…。ディオの言葉にそう言うと、
フィーナは薔薇の花びら――青い花弁――を、地上に降らせた。
掌から零れるそれが作り出す世界というのは、まさに神秘的であった。
こんな瞬間は、もう二度とないだろうとも思った。
「…仕事?」
その光景に魅入っての沈黙。
ひと言でそれを破ると、フィーナは二人に向き直った。
「ぇ?…あぁ…。」
ぼーっとしていた矢先の出来事。
シャゼルはそれに不意を突かれたような返答をすると、ディオを振り返った。
「……。」
振り返ってきているシャゼルのことを、解っているのだろうか。
彼はじっと目を閉じ、何かを懸命に感じ取ろうとしているようだった。
―――…それは、儚い時だった。
「近くにモンスターが出たらしい。」
「ふぅん…?」
ぱちりと目を開けると、ディオはフィーナに微笑んだ。
「あーあ。なんか、この頃忙しいよね。」
「それだけ、世界が危なくなってるんだ。」
「そうそう。…忙しいなんて言ってられないって。」
前へ。そう歩き始めるフィーナ。
上を。そう見上げるディオ。
後を。そう振り返るなとシャゼル。
「行こう。」
フィーナが微笑んでそういうと、二人はこくりと頷いた。
「……あぁ…!」
走り出す三人。
ずっとずっと、この世界が続けばと思いつつ。
叶わないその夢。
―――青い薔薇は、この世界をどう思っただろうか。
=end=
※拍手ありがとうございましたv
なお、この小説は、サイト内の小説とは全く別物です。
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