OO ライルと刹那とティエリア(とアレルヤ)



 あの妙ちくりんなシナリオの悪夢(という名の、仮想ミッション)からようやく解放され、どうにかこうにか置き去りにされていたアレルヤを引っ張り出し、ようやく一息ついたところである。

 アレルヤは、仮想ミッションから強制的にだしたせいなのか、まだ昏々と眠ったままだ。基本、暗示やら催眠にはとかく落ちやすい性質なのだという。屈強そうな体つきをしているくせに、人柄とおおよそ正反対だということは、これまでのことでとりあえずライルも了解していた。
 大丈夫なのかよ、と訊くと、どういうわけだか自信満々の刹那から「アレルヤだ。問題ない」という意味不明の返答が返ってきた。妙なところでアレルヤの底力を信じているようだが、乱暴な理屈であることは間違いない。頷いていた辺り多分ティエリアも同類である。なんつう同僚。
 なんかカワイソ、と思ったからほどちかいところに横たえられたアレルヤの頬をつねった。もちろん、一向に起きない。
 振り返ったライルは、疲れた顔をしている現行マイスター二人に目を戻す。

「なあ、あんたらああいう訓練ずっとやってたのか? 兄さんも?」
「役割(ルール)に従うことも時には必要だ。マイスターには秘匿義務が存在した。太陽炉およびガンダム、ひいては我々の存在の機密について口を開くことは死よりも重い罪だと。そのために、素の自分と偽るぐらいの事は臨機応変にしなければならない。その為の訓練だ」
「……それであの人格なのか?」
「……R35(あれ)を設定したのはヴェーダで俺じゃない」

 ふいと疲れたように刹那は椅子に坐した己の膝あたりに目を落とした。心なしか少々声がかれている。普段使わない声帯の高音部を酷使しまくったせいだろうとライルはあたりをつけている。

「あのミッションが無茶苦茶だったせいだろう。まともなものもある。刹那、彼に見せてやるといい」
「タイプは」
「そうだな。……A15で」
「了解」

 刹那はそれでもすんなりと席を立つと、自然な仕草でまっすぐに部屋を出ていった。青い肩のラインが部屋の先にでると、やがてかしゅんと扉がしまる。
 と思うと、次の瞬間扉が開いた。
 先ほどまで疲れに彩られた無表情だった表情筋が嘘のような、困惑した顔。
 きょろきょろと室内を見渡して、既知であるはずの二人を見定めてもまだなおそのひとみは揺れたままである。

「あの……すみません、部屋を間違えてしまったみたいなんですけど……お手洗いはどちらですか?」

 蚊の鳴くような心細げな声を裏付けるようによく知っているはずの赤茶けた瞳が落ち着かずに瞬いた。
 わかっているのにうろたえて、あっち、と指すと、青年はそこでゆらりと安堵したように目元を和ませた。知っている青年だとわかっているのに、別人に会うような感覚をおぼえてライルは混乱する。

「そうですか、どうもありがとう」

 にこっ。
 おしまいにはかなげな微笑すら浮かべて、青年は普段それよりじゃっかん高めをした声でそう答え、再び扉を閉めた。
 扉が開く。先ほどのはかなげなようすはどこへやら、いつものようにさりげなくはいってきて迷わず先ほどの席にすわった鉄面皮の青年は、きりっとそこで眉を吊り、きめ顔らしきものを浮かべた。

「俺はガンダムだ」
「……はいはいわかったよ、あんたはすごい。つうか普段いかに勿体無いことをしているかという話だろ。ほんと愛想ねェのな……」
「ふっ……それでこそ、ガンダムマイスターだ」
「教官殿俺の話きいてねえだろ」

 普段が普段なだけにギャップがすごい。この顔がふわりと崩れることの、この、破壊力ときたら。我関せずの仏頂面に戻った青年をかるく笑って肩をすくめてから、そういえば、と手近の青年を指した。

「こいつは?」
「「アレルヤは下手だった」」
「……あーなんかそれわかるわ」


[表情5のお題 01 にこっ]
お題提供:あなぐら


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CD第三弾はいろいろやりすぎたとおもう。マイスターすきだったからたのしかったけど。

拍手ありがとうございました。
以降、OO→デジフロ→P3P→WOF→Dグレとつづきます。






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