BLきつねと一日(ふう&みい編)
もう二年前のこと。
出張中のあまり治安のよろしくない国で、きつね獣人がワゴンセールになっていたのを見た俺は、安値でワゴンに並ぶ境遇と、彼らのつぶらな瞳にすっかり心を射貫かれてしまった。ちょうど取引がうまくいって浮かれていたのと酔っ払った勢いで、うっかりワゴンごと買い占めてしまったのだった。
…そのきつね達は最近、何となく2匹セットでいることが増えたようだ。
というのは、育って大きくなって来たきつね達を全員を平等に1匹ずつ相手にしているとちょっと体力が持たなくなってきたからだ。「買い物兼散歩」だの「一緒に料理」だのといったことをする際、2匹ずつ誘うことにした俺に原因がある。
俺が呼ぶときは適当に組み合わせていたのだが、最近ではあっちから勝手に二匹組になってやってくるようになった。組み合わせは大抵、ひいとむう、ふうとみい、ようといつ、というコンビだ。
気をつけて見ていると、特にようといつの仲がいいらしいことに気がついた。どうやらそれを見ていた他のきつね達が真似して何となく誰かと一緒にいることが増えて、それが当たり前になった、という感じ。
まったく子育て(?)とは面白いものだ、と感心しながら、俺は洗い物を手伝ってくれているふうと、渡されるまま洗い終えた皿を拭いているみいを横目に見つめた。
「…?ご主人、どうしたの?」
まだ泡がついてたかな、と言いながらふうが皿をひっくり返して眺める。
「いや、ふうは丁寧に洗ってくれるなって思ってただけだ」
「えへへ、そうかな」
頬を染めて笑うふうをちらりと見たみいに、俺は続けて笑いかけた。
「みいも、並べるのがうまいし」
6匹と俺の分の食器はいつも棚から溢れかえっているのだが、何故かみいが並べるときれいに納まるのだ。どうやら収納の才能があるらしい。ちょっと遠出するときの荷造りもみいに頼むとうまくいく。
「…そうでもないですけど」
可愛くない返事は照れ隠しだ。手が濡れてるから腕のとこで雑に頭を撫でてみたら、ちょっと嫌そうに睨まれたが、尻尾はぱたぱた左右に振れてたから、気にしないことにした。