*******拍手ありがとうございます******* その暖かさが心を満たす(表題:お題サイトligament様より) 「祐一先輩、手を貸して下さい」 恒例となった、放課後の図書室での待ち合わせに祐一が来るなり珠紀は己の両手を彼に差しのべて言った。 「……手を、か?」 疑問を感じながらも言われるままに祐一は珠紀の手に己の手を重ねる。 すると、おもむろに彼女の両手でぎゅう、と包み込まれた。祐一は珠紀の行動に目を瞬かせつつ、重ねられた温かな手に頬が綻ぶのを感じた。突然どうしたのだろうと珠紀の出方を待っていると、彼女は暫く真剣な顔をして祐一の手を握っていたが、ふとふにゃりと顔を緩ませて微笑んだ。 「温かいです。うん、やっぱり」 「やっぱり?……何がやっぱりなんだ?」 祐一の問い掛けに、珠紀は漸く自分が説明もなしに突飛な行動に出ていたと理解したのか、しまったという表情になったあと頬を赤らめた。そうして面白がるような祐一の視線を受けながら話し出す。 「突然すみません……えっとですね、この間聞いた歌の歌詞で『幸せの温度は人の体温に近い』――っていうようなフレーズがあって」 照れていながらも祐一の手を包んだままの珠紀にこっそりと笑みを深める。いつもの彼女なら照れてしまうとぱっと手を離してしまうところなのだが。説明することに頭が行って、手を離すことは思い浮かばないようだった。 「素敵だなぁって思って。それで、本当かな?って思ったら先輩の手を握って確かめたくなって……」 最後は段々と恥ずかしくなってきたのか声が小さくなっていく珠紀にくすりと笑って、祐一は握られていない片方の手を彼女の手に重ねた。 「実感は出来たか?」 先程やっぱり、と言っていたので歌詞の通り感じられたのだろうが、直接彼女から聞きたくてそう問い掛けた。珠紀は重ねられた手に再び頬を染めると、少し目を伏せてこくりと頷いた。 「祐一先輩に触れて体温を感じると、温かくて、幸せだなぁって思います」 「……俺も、お前を抱きしめて、お前の体温を感じていると幸せを感じる」 祐一はそう言うと、握り合っていた両手を引き寄せて己の腕の中に珠紀を閉じ込めた。わ、と不意打ちの抱擁に慌てる彼女の耳元に「こういうふうに」と囁くと目に映る耳が真っ赤に染まった。その様子にくすくすと笑うと、珠紀が抱きしめられたまま拗ねたような顔で見上げてきた。 「誰か来たらどうするんですか」 「今の時間は大体誰も来ないから大丈夫だろう。それに、俺が来るなり手を握ってきたお前がそれを言うのか?」 祐一にそう言われ、ぐっと押し黙った珠紀だが、いやでも先輩が来たときは誰もいなかったし……とぽそぽそと呟く。 「今も俺たちしかいないことに変わりはない。誰か来たらその時考えればいい」 だからもう暫くこのままで、と祐一は抱き締める腕に力を込めた。 「お前が嬉しいことを言ってくれたから、暫く幸せに浸りたい」 「祐一先輩……」 言葉通り嬉しそうな祐一に、珠紀は微笑みを返して自分の両腕を彼の背中に回した。じんわりと伝わってくるお互いの体温に心も温まっていくのを感じながら、二人は幸せそうに微笑んだ。 **** 某曲で珠紀の言うようなフレーズがあって、ああ素敵だなと思っての小ネタでした。 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 拍手ありがとうございました!(現在お礼は一種のみです) ご意見ご感想などあればお気軽にどうぞ。 (お名前は任意です。お返事はブログにて) |
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