策士はたけカカシ


「あーあ、イルカ先生のチンコみたいなぁ……」

はたけカカシは、その一言で上忍待機所の空気をものの見事に凍らせた。
居合わせた忍の視線が一斉にテンゾウに集まる。

「いや、どうしてボクを見るんです」

ぽそりと呟くテンゾウの耳に、カカシの声がまた聞こえてくる。

「どんなチンコなんだろうなぁー。『触らないから見せて』ってお願いしたら見せてもらえるかなぁ……ダメだろうなぁ。軽いセクハラでもあんなに嫌がるんだから。先生って本当に照れ屋さんで純情だよね。そこがたまらなく可愛いんだけどなぁー」

また、縋るような視線がテンゾウに集まって、テンゾウは大袈裟に溜息をついた。

「ねぇ、先輩。声に出ちゃってますよ」
「えっ!? ほんと?? はずかしい!! みんなごめーんね」

だけど、皆が胸をなで下ろしたのも、つかの間で。

「バレちゃったから、もう言っちゃうけどさ。俺、随分前からイルカ先生に片想いしてんの。で。もう色々限界だから、せめて先生のチンコを見たいと思ってるんだけど、どうしたら見られるか一緒に考えてくれない?」

ひぃええええええ!!!!!!
藪をつついて蛇を出してしまった上忍の皆さまのお顔は、真っ青。
独り冷静なテンゾウが呆れた声で答えた。

「そんなのトイレで偶然を狙えばいいじゃないですか。丁度寒い時期だし、イルカ先生だってトイレに行く回数が増えているんじゃないですか? 先輩が本気になればそんなに難しい話じゃないと思いますけど?」

カカシの眼がお星さまのようにキラキラと輝きはじめた。

「テンゾウ!!! ありがとう。お前、ほんとうに天才だね!! 今度一楽のラーメン奢らせてやるから!!」
「へーへー。奢ってやる、じゃなくて、奢らせてやる、なんですね。わかりましたわかりました」
「じゃ、俺今から受付いってくるから!」

ぶわん!
っと空気が揺らいで、カカシが消え失せた。


所変わって、受付。
大量の受付の仕事に一区切りをつけたイルカは、机の上に休憩中の札を置き、いそいそと席をたつ。
随分と前から尿意を我慢していた。少しコーヒーを飲み過ぎたか、と反省しながら廊下に出ると、トイレの前に列が出来ていた。

珍しい。男子トイレで列なんて。
イルカは小首をかしげながら、列にならぶ。
女性と違って早いからそう待つこともないだろう、と思ったのが間違いで、小便器は3基、大便器も1基あるはずなのに列は遅々として進まない。

さらに、妖しいことに、皆、顔を真っ青にしてトイレから出てくる。
別のところに行くほうが早いか、このまま待ち続けていたほうが早いのか、悩んでいるうちに便所の扉の前についてしまった。
ほんの少しの勇気と共に、グイと取っ手をひいて中に入る。

「――――えっ!!」

じょろろろろろろろろろろ
じょろろろろろろろろろろ

小便の音をBGMに艶のある男の声が聞こえてきた。

「あっ、イルカ先生、待ってたんですよ!」

じょろろろろろろろろろろ
じょろろろろろろろろろろ

そう言ってニコニコと笑っているのは、里の業師はたけカカシ。
イルカを日々追い回し、数々のセクハラを仕掛けてくるけしからん男。
その男が、何故か二人いて、小便器三基の両端で用を足している。
ちょっとまって、本当に意味がわからない。
イルカはひきつる笑顔で言葉を返す。

「こんにちは、カカシ先生。こんなところで待ってなくても、あとで待機所に伺いますよ」
「いーえ、ここじゃなきゃ意味がないんです! さぁイルカ先生真ん中が空いてますよ。どうぞどうぞ」
「いっ、いえ。俺はこっちを使います」

身の危険を感じたイルカは慌てて大便器の小部屋に逃げ込んだ。
ガンッ!! ドアの閉まる音と共にイルカの絶叫が響く。

「ぎゃぁああ!!! 大便器が大破してるぅうううう!?」
「うん。だから俺の隣で、ね?」
「うっ、ううっ……」
「せんせ、随分待ったからそろそろ限界なんじゃない?」

――こんな状況でションベンできるかってんだ!! 何されるかわからんぞ。カカシ先生が終わるまで我慢するんだ、俺!!!

「は。ははは。いやちょっと。ここで待たせてもらいますから」
「えー。俺、長いですよ? 終わるの待ってたら漏れちゃうよ」

流し目を送られて、イルカの背筋に震えがはしる。

「ま、先生のお漏らし見たいから、待ってもらっててもいいですけど、」

――ひぃいいいいいい!!!!

「お邪魔しますッ!」

イルカは意を決して真ん中の小便器の前に立った。
チャックを下ろし、逸物をパンツから取り出す。

「うわぁ!」

両端のカカシから感嘆の声が漏れた。

――みられてる、みられてる、みられてる!!!! めっちゃみられてる!!
おちつけ、うみのイルカ。
さっさと用を足して、すぐさまここを立ち去るんだ! 平常心、平常心だ!! 心を無にしろ。

「イルカ先生のおちんちん、初めてみました。うれしなぁ」

じょろろろろろろろろろろ
じょろろろろろろろろろろ

――ひぃいいいいっ!! 影分身まで出して、なにガン見してんだよ!! さっさと出し終えて早く出て行けよ、ちくしょう!!

じょろろろろろろろろろろ
じょろろろろろろろろろろ

――つか、はたけカカシ!!! あんたどんだけションベンでるんだよ! 内臓全部膀胱かよ!?

イルカ、半泣きである。

「うわぁー。その顔、たまんないなぁ。泣きそうな顔でおしっこしてる先生が見れるなんて、ずっとここで待ってた甲斐がありました~」
「トイレの列は、アンタのせいかっ!!」

怒りのあまり、カカシに視線を当てたイルカは見てしまった。
雄々しく勃ちあがっている、巨大でドス黒いエゲツないチンコを……!!!

――っげぇっ!!! 

じょろろろろろろろろろろ
じょろろろろろろろろろろ

ションベンは止まらない。
イルカのションベンも止まらない。

「く、くそ、どうなってんだ!!」

焦るイルカが叫んだ。

「あ。水遁の術の応用をアナタにかけました。もう少しアナタのチンコを見ていたいから、我慢してくださいね。大丈夫。危険な術じゃありませんよ。だって俺は貴方が来るのを待って、かれこれ1時間はここでションベンしていますから」
「あっ、あっ、アホかぁああああああああ!!!!! 誰かっ、誰か助けてー!!! ヒルゼン様ぁーーーーーーー!!!」
「やっ、ちょっと待って、アナタ。こんなことで火影様呼んじゃう!? え? まじで」


「イルカ――――!! どうしたんじゃぁああああ!!!!」


駆け付けてきたヒルゼンに、カカシがボコボコにされたのは言うまでもない。
その後紆余曲折を経て、二人は結ばれることになるので人生とはよく分からないものである。

おわっとけ!!!



よっしゃ、式でもおくってやるか~!
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