最後の書類にサインを入れ、漸く仕事を終えるとペンを机に置いた。
これで明日はゆっくり過ごすことが出来るだろう。
椅子に深く凭れかかり、疲れた頭を休めるように目を閉じる。
ここ数日は急の決裁書類が多かった。
どれもそう面倒なものではないとはいえ、数が多いと手間には違いなく。
結局、休みを返上してまで仕事をする羽目になってしまった。
疲労のせいか、身体が少しだるい。
寝不足も手伝っていたのだろう、瞼を伏せたクルガンはいつの間にかまどろみへと意識を委ねていった。

どれほどの間、うとうととしていたのか。
ふと目を覚まし、鈍く痛む頭に緩く首を振る。
椅子に座ったまま、半端に寝てしまったのが原因だろう。
脳が痺れるような重い頭痛にこめかみを押さえつつ、時計に目を向ける。
時間はそろそろ夕方になろうかという頃。
眠る前よりも少しばかり暗くなった室内を眺めつつ、溜息を落とす。
疲れていたとはいえ、執務机に座ったまま寝ることなどそうそうあることではない。
眠る前から今も続く身体のだるさと、重く響く頭の痛み。
風邪の引き始めかも知れないと考え、漏れる溜息がもう一つ。
体調管理すらままならぬ自身に情けなくなってくる。
何気なく目をやった先には、赤々と燃える暖炉の炎。
長く換気を行っていないことに気付いたクルガンは椅子から立ち上がり、背後の窓に手を掛けた。

半分ほど窓を開けると、室内に冷たい風が入り込んできた。
身が引き締まるようなひんやりした空気を吸い込むと、少し頭痛が和らぐ気がする。
灰色の空から落ちてくる白い雪が、時折風に流されて室内へと入り込んでくる。
雪の降るこの時間では、流石に外を歩く人の数も少ない。
と、くすんだ色の光景の中、一際鮮やかな赤が視界に飛び込んできた。
昼過ぎから町へ出ていた同僚が帰ってきたらしい。
「全くあの男は…」
積もりつつある雪を楽しそうに踏む様子は、町ではしゃいで走り回っている子どもと変わりない。
僅か数分の間に3度目の溜息をついたクルガンは、コートを手に執務室の扉を開けた。



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