■拍手お礼@思いを込めて20題■ |
ふらりとお題サイトさまへ足を運んだらとても素敵なお題を見つけてしまったので、拍手お礼として作ってみることにしました。勝手気ままに遊んだ個人企画なので、雰囲気だけ楽しみ頂ければと思います。
(出来上がり次第増えていく予定です。現在2種のみ→TOG+空の軌跡) |
思いを込めて、
『02:作ります、不器用だけど(空の軌跡:ヨシュエス)』 |
「…ヨシュアってば、どーして手先が異常に器用なんだか……」
卵を掻き混ぜながらエステルはぼそりと呟く。しかしその呟きはひとりごちているようで、当の相手にしっかり聞こえていた。その後に小さく「あたしにもヨシュアみたいな器用さがあればなー」と言っているのも。
「異常に、って…、普通だと思うけど…」
「だって、ヨシュアってばパパッと何でも出来ちゃうじゃない! 昔から料理は上手だし、父さんが教えることも飲み込みが早かったし、シェラ姉がタロット占いを教えてくれた時もすんなり出来るようになっちゃったし、服のほつれもあっという間に直しちゃうし!」
「そうでもないと思うけど…。教えられたことがすんなり出来るようになったのは、父さんやシェラさんの教え方が上手だったからだし、料理はするの嫌いじゃないから自然に上達したんだろうし、裁縫は──…」
そこまで言ってヨシュアは言い淀んだ。この先を言うのは、ほんの少し躊躇われるからである。
「裁縫は?」
「…──エステルが外遊びでよく枝葉に引っかけたりしてるから、自然に」
「う…。…ごめん」
困ったように眉根を下げて話すヨシュアに、エステルは改めて自分が幼い頃彼に対して迷惑をかけまくっていたのだと理解する。昔から後先考えず『思い立ったら即行動!』の超行動的性格なエステルは、ヨシュアを連れてはロレントのあちらこちらに遊びと称して小さな冒険に繰り出したものだった。その度に何かあれば連れのヨシュアが後始末をしてくれていたのだから、必要以上に裁縫(恐らくそれ以外もあるだろうが)のレベルが上がってもおかしくはない。
「別に謝る必要は無いよ。勿論、最初の頃は嫌々やってた時期もあったけど、君と接しているうちに段々それも楽しめるようになって来た自分がいてね。元々弱虫な性格だったから、アウトドアよりもインドアの方が向いてたんだと思う。…だから、外ではしゃぎ回るのはエステルに任せてたんだ」
エステルはいつの間にか、話しているヨシュアの口元が自然と緩んでいたことに気付いた。
最近よく思う。これが彼の本当に幸せを感じている時の笑顔なのだと。
『自称:ヨシュアの観察第一人者』である彼女だからこそ気付く、彼の些細な変化。いつもの笑みとは違う、心の底から自然に湧き出た笑み。それはヨシュアにとって、凄く大きな心の変化だったのだろう。また同時に、とても喜ばしいことでもあったはずだ。なぜならそれは、彼が彼自身を『生きている人間』と実感出来るきっかけになったからに他ならない。…しかし、最後に言われていることはいつもの嫌味のようにも聞こえた。だから疑念を載せた視線をヨシュアに送る。
「…それって褒めてるの?」
見つめる──というよりは、半眼で睨みつけて来たエステルの紅玉の瞳を見つめ返して彼は即答した。
「──勿論。僕はそんな君だから好きになったなんだから」
「ひゃっ!」
エステルが声を上げて卵の入ったボウルを取り落としそうになるが、なんとか体勢を立て直したお陰で卵は宙を舞わずに済んだ。自慢ではないが、普通の人よりは鋭い反射神経と運動神経がこの結果へと結びつけたのは言うまでもない。そんな彼女を見て、ヨシュアはホッと小さく胸を撫で下ろしたようだった。
「…大丈夫、エステル?」
「だ、大丈夫…。…も、もう、急に恥ずかしいこと言わないでよ!」
「恥ずかしいも何も、本当のことなんだけど…」
──そうだった。この人はありのままの自分を見て、好いてくれて、愛してくれていたんだった。忘れていた訳じゃないけど、ふとした瞬間に再認識させられる彼からの想い。そしてその想いを感じて変化していく自分。ああ、顔が熱い。それは何より彼のせいだ。自分の体なのに、自分の心だけじゃ制御し切れない不安定な体。まるで、自分の体の一部が彼のものになってしまったかのような、自分一人だけでは到底起こせる筈もない、上がっていく体温と、早くなる鼓動。こんなにドキドキするのは、こんなに嬉しいのは、それほどに彼を愛しているからだという証明。
(あたしはヨシュアみたいに器用じゃないし、言葉にするのは恥ずかしいから出来ないけど…)
「…その代わり、愛情たっぷり込めて作るから待っててね!」
「え…っ!?」
ほんの少しでもいい。この想いが、あなたへ届きますように。
不器用な私から、ありったけの愛を込めて。
* * * * *
レナさん直伝:愛情たっぷりの『ふわふわ卵のチキンオムライス』
※愛情という言葉を言われ慣れてないよっくんが顔を真っ赤にした事実を、無論えっちゃんは知りません^^ |
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