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<お題小咄>


■"ゾロ"が"ナミ"を「甘やかす」■


「方向オンチ」
「にぶちん」
「寝ぼすけ」
「剣術馬鹿」
 延々と続く非難の言葉。前を歩くその人は、きっと仏頂面をしているに違いない。
「朴念仁」
 なんで気付かないのよ。なんて、一人で腹を立てて、一人でむくれて。それが馬鹿みたいだっていうのは判っていても、どうしようもない。
「あのなぁ」
 いい加減、うんざりしたような声。賞金1億超えの男。凄みをきかせれば、たいていの者は震え上がるその強面。でもそんなの全然、恐くない。
「何でついて来んだよ。そんなに文句言いたいなら、一緒に来なきゃいいじゃねぇか」
「何言ってんの!アンタが勝手に、私の前を歩いてるんじゃない」
 左足で、足元の小石を軽く蹴る。サンダルだから、指先は傷めないようにかる〜く。
「なぁ」
「?」
 右の足指先に視線が注がれる。左耳のピアスの触れ合う微かな音。普段は見えない翡翠色の頭のてっぺん。
「痛いなら痛いって素直にそう言え。紛らわしい色塗りやがって」
 無骨な指が足の指に触れて、ぞわっとした。嫌悪とかなんかじゃない、むしろ逆。
 バラ色のマニキュアを塗った割れた爪に、ゾロの指先がわずかに触れる。うわっという声はこの際、聞かなかったことにしてやろう。
「こんな華奢な靴履いてるから、こんなになるんだろうが」
 立ち上がってしまうと、頭のてっぺんは見えなくなるのがちょっと残念だ。
 仕方ねぇな。という、嫌々っぽい声。そして、眼下に広い背中。
「………何?」
「背中貸してやる」
「借金はチャラにしないわよ?」
「判ってるよ!」
 ああもう、人の好意は素直に受けやがれ。と、いつものようにぶっきらぼうな返答。可笑しくて、背中を向けてるゾロに判らないように小さく笑って。それから、ふと思いつく。
「お姫さまだっこは?」
「して欲しいのか?」
 あれで、町中を?と、立ち上がって、しごく真面目に聞いて来る。これはコイツも面白がってるな。っていうのはすぐ判る。だって、片眉がちょっとだけ動いたもの。
「うん!」
「…抱え上げるぞ」
「ウソ嘘。背中でお願い」
 腰に手を回して、そのまま肩に荷物のように担がれそうになったので、すぐに撤回。可愛らしく小首を傾げて、顔の前で手を合わせて。仕上げにちょっと片目を閉じて軽いウィンク。
「…」
 騙されやしない。そう語る視線は無視して、背中にまわる。しゃがんで軽々と背負ってくれたその頭をわしわしと撫でると、ヤメロ。と、嫌そうな声。
 でも、何だかんだで、こういう時は甘やかしてくれるオトコだって、私は知ってる。


                                <ONE PIECE/ロロノア=ゾロ・ナミ>



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