「お待たせ!フェイトちゃ・・・・・ん?」


日誌を先生に届けて急ぎ戻って来た教室。
開けっ放しの入り口から、中で待っていてくれる筈の
愛しい人の名を口にしながら私は室内へと飛び込んだ。


(あ・・・)


そんな私の視線の先で・・・
確かに私を待っていてくれたであろう彼女は
待ちくたびれてしまったのか、机に突っ伏しながら
小さな寝息を立てて眠っていた。



「フェイトちゃん?」


小さな声で呼んでみる。


「・・・・・」


よっぽど疲れちゃってるのかな?。
囁き程の小さな声はフェイトちゃんの鼓膜までは
届かなかった。





「・・・・・」


フェイトちゃんの隣の席の子の椅子をそっと引き寄せて
そこに腰掛け、間近でその寝顔を観察する。


(まつ毛長いなぁ)
(お肌ツヤツヤ)
(綺麗だなぁ・・・・・)
(ほっぺが気持ちいいの)


ついつい触れたくなって、人差し指でその頬に触れた。
吸い付くような柔らかな感覚につい口元が弧を描く。




そしてそれは本当に、無意識に・・・・



(フェイトちゃんの・・・)



吸い寄せられるように親指が僅かに開いた桜色を撫でいた。



「ん・・・・・」
「っ!!」



小さく漏れた声に驚いて、身体が跳ねて固まった。



「・・・・・」


その体勢のまま数秒。
そっと顔を覗き込んで、いまだ閉じられたままの瞼に
ホッと胸を撫で下ろす。



(ビックリした・・・)


ドキドキとする胸元を制服の上からギュッと握りしめる。


(どうしよう・・・平気かな?・・・起きちゃうかな)


思いついたのは普段なかなか自分からは出来ない事。
眠っている時になんて反則だよ。って・・・



(言われちゃいそうなんだけど・・・)



だってフェイトちゃんみたいに出来ないんだもん。




意を決して眠る彼女にそっと顔を近づける。
自分だけ目を開けているのは何だか恥ずかしくて
そこに触れる少し前に目を閉じた。



だから、気が付かなかったの。フェイトちゃんの
口元が嬉しそうに弧を描いていた事に・・・・。


























なのはを待っている間に襲ってきた睡魔にあっさりと
私は意識を手放していた。



つん、と頬に触れる何かに僅かに意識が浮上して
そろそろと唇に触れられた感触で完全に覚醒した。


なんだけど・・・


なのはの息を飲む気配と、それから私を窺うような
視線を感じて、何となく眠ったふりを続けてみる。



・・・・・起きちゃうかな



そんな呟きと近づく気配に、なのはが何をしようと
しているのかを悟って、あえて寝たふりを決め込む。


恥ずかしがって普段は自分からはしてくれないなのはに
一回だけチャンスをあげる。



だから、早く。



ついつい緩む口元に、どうかなのはが気が付きませんように。









『あなたからキスして』



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