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感謝をこめて…

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勝ち負け


「明日晴れたら、ピクニックに行くんだからね!」

「わぁーってるよ。でも降ったら好きにさせてもらうかんな」

「晴れるもん!」

「へいへい、晴れるといいっすねー」

 こんの態度…年はとっても全然かわんないんだから。

 っきー!

「トラップのばかぁ! オジン!」

「るせぇ、チビ!」

「もうチビじゃないもん!!」

「ピクニックなんざ行きたがんだから、まだまだチビだっつの」

 なあ? チビっ子ルーミィ―――

 トラップはそういって、ニヤリと笑った。



 パーティが解散してから何年たっただろう。

 あたしにはもう、あの頃の記憶はあまりない。…チビだったから。(今はちがうけど!)

 でもね。あたしたちがどんな冒険をしてきたかってのは知ってるんだっ。

 パステルの本を読んだし……それに、みんなが会うたびに語ってくれるから。

 あたしたちの冒険談!

 パーティは解散しても、縁は切れなかったみたいでねー。なんだかんだで、ちょくちょく会ってる。

 それぞれの道を歩みながら、ね。

 だけどトラップと会うのは本当に久しぶり。

 この間もわざわざ家まで訪ねたげたのに、留守だったんだよなぁ。お宝さがしで。

 その前なんか、みんなで会う約束してたのに…ドタキャン。

「あいつらは逃げねえけど、お宝は逃げるんだ!」

 と、いいのこして走りさったそうな。…ふつう逆でしょー?!

 それでパステルが「ごめんねー」って謝ってくれたんだっけなぁ。パステルが謝ることないのに!

 ……ああ、思い出したら腹立ってきた。



「あんだよ、その目は」

「べつにぃー」

 ま、こんなんでトラップにいちいち腹立ててちゃキリがない。

 オトナにならなきゃね、ルーミィ!

「あー、明日のピクニック、楽しみだなあっ」

「……………んっとに、チビのまんまだなぁ、おめえは」

 なんだとぉ!?







 なんでピクニックかといわれれば。

 ―――とくに理由はなかったりする。

 とにかくトラップを引き止めなきゃと思って、なんか賭けでも持ちかければ食いついてくるかなと思って。

 あわてて思いついたのが、「晴れたらピクニック」。だったの。

 まあ、その発想が子どもっぽくないこともない…かも、ね。

 でもそんな賭けにのってきちゃうあたり、トラップもまだまだガキだなあって思わない? ねえ!

 ……なのに、さ。

 今はさ。

 あたしより、大事なものがあるんだってさ。

 お宝はもちろんのこと。

 盗賊団とか。

 新しい家族とか。

 だから、明日帰っちゃうんだって。雨が降ったら。

 ほんとはこの賭けをしてなかったら、晴れても降っても帰るつもりだったんだって。帰りたいんだって。

 ……………久しぶり、なのにさ。



 ねえ。トラップ。あたしは。

 ルーミィは、トラップのこと、好きだよ?

 チビだった頃と変わらないまま。







 翌日。

 天気は気持ちのよい快晴―――――じゃなかった。

 かといって雨が降ってるわけでもなくて。



「くもり…」



 空一面をおおう薄いグレーを窓越しに見上げて、あたしはぽかんとしてしまった。

 そりゃ、そうだよね。

 よく考えれば、お天気なんて晴れるか雨降るかの二つに限らないんだよね。

 いや、よく考えなくてもそうか。

 でもこんな結果、ちっとも予想してなかったよー!

 うむむ。この場合、賭けはどうなるの………?

「負けだよ」

「うわっ! トラップ!」

 いつの間に後ろに!

 トラップはあたしよりも頭三つぶんぐらいは高い身長から、同じ空を見上げていた。

 その顔からは喜びも悔しさも読みとれない。

 おそるおそる聞いてみる。

「……負けって…どっちの?」

「おめぇ」

「えええ!?」

「と、おれ」

「…へ??」

 ええっと…? あ、なーんだ。つまり、両方負けってこと?

「だってそーだろがよ」

「うん。そっか。だよね」

 それじゃあ………



 聞くべきか。

 聞くべきだよね。

 聞こう。

 でも。

 聞きたくない。



 トラップは…帰っちゃうの? もともとそうするつもりだったから。

 帰っちゃう……の?



「んで、これから何すんだ? ルーミィちゃんよ」



「ふえ??」

 …今なにいった? この人。

「笛? 吹くのか?」

「いやいやいや。そーじゃなくて」

「じゃーなんだよ。早く決めろよなぁ」

 ……あ、れ?

「帰らないの?」

「あんだ、帰ってほしいのか?」

「ちがうよ! でも、賭けは……」

 二人とも負けだから。無しってことになるんじゃないの…?

 すっかり訳がわからなくなってトラップの顔を見上げていると、トラップはおっきなため息をついた。

「だぁーらさ。おめぇは、負け。ピクニックには行けねえの」

 ぽん、とあたしの頭に手をのせる。

 ひさしぶり。

 だけど、よく知ってる、手。

「んで、おれも負け。『降ったら好きにする』っていったかんなぁ…残念ながら好きにできなくなっちまったの」

 ニヤッと笑う表情だって。あたしの。

「しょーがねえから、おめぇに付き合ってやるんだよ。ただしピクニック以外のことをな!」

 ルーミィの、大好きなトラップ!



 あとでパステルから聞いた話。

 トラップはね、ルーミィのことがとってもかわいいんだって。

 だからね、賭けがどうなっても、なんだかんだでルーミィと遊んでくれるつもりだったんじゃないかって。

 あたしはトラップのことをそこまで好意的には見れないけど…

 確かなのは。

 ルーミィのお願いをちゃーんと聞いてくれたってこと!



「それで、どうやってパステルに告白したの?!」

「……っせえなぁ。これ以上はチビに話すことじゃねえの!」

「もうチビじゃないもん!」

「チビだね」

「んもう、そんなのどっちでもいいから早く! 教えて!」

「……………やっぱ帰りゃよかった」

「トラップ!!」

 ちょっぴりオジンになったトラップは、ちょっぴり顔を赤くして。

 でも、お願いを聞いてくれたんだっ。

 ギャンブルは失敗。

 だけどあたしは大満足!

「これだから、こいつに会うの嫌なんだよな…」

「なんかいったー?」

「べつに」



 うっふふ。

 ねーえ、トラップ。

 ルーミィ、ずーっと、トラップのことだぁーいすきだよ?



「あぁでも、トラップがパステルを好きな気持ちには負けるかなぁ」

「もう黙れよおまえ!!」

「やだ! ねえねえ、プロポーズのときにさぁ……」






某Gさんに「リクエストしてください」と要求して(厚かましいー!)書いたもの。

リクエストは『ほのぼの』。ほのぼのといえばルーミィ。

てなわけで、ルーミィちゃまに『ほのぼの』と、トラップいじめをしていただきました(笑)







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