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感謝をこめて…

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「トラップ、何か気づいたこと、ない?」

 おれがソファにふんぞりかえっていると、パステルが足もとにやってきた。

 ぺたんと座りこむ、その下は毛の長い絨毯。

 二人で選んだヤツ。

「ねね、どう?」

 両手をおれの膝の上に乗せて見上げてくる、その様子はまるで尻尾ふってる犬みてえだ。

 ただ違ぇのは。

 こいつからは、女の気配がすること。

「ふん」

 さりげなく、あくまでさりげなく目をそらす。

 だが当然パステルは怒りだした。

「なによそれー! 人が聞いてるってのに、何その態度!」

「くだらねえこと聞くんじゃねえよ」

「くだらないって……!」

「髪形、いじったんだろ」

 なんてことはない、っつう感じでそういってやると、パステルは目を丸くして黙った。



 忙しいからと、いつもは冒険者時代と同じ、髪を下のほうで一くくりにしていることが多い。

 だが今日は。

 前髪の分け目を変えて、実年齢より少し幼く見える顔立ちに大人っぽさを加えている。

 柔らかな後ろ髪は高く結いあげられ、綺麗にウェーブがかけられている。いつもより念入りに手入れしたんだろう。

 小説の原稿が仕上がったからだろうな。

 女ってのは、時間があるとてめぇの外見磨くのに費やすんだから。

 まったく、くだらねえ。



「へぇ、よく気がついたねー」

「…おれを誰だと思ってるんだ?」

「あははっ。そのセリフ、懐かしい!」

 さっきまで口を尖らせていたとは思えねえ明るい笑い声をたて、パステルはおれの隣に勢いよく座った。

 沈むソファ。

 微かに傾くおれ。

 下がったほうの肩に、ふわりとパステルの髪がかかる。

「気づいてくれて、ありがとう」

 肩から、温度が伝わってくる。

「でも、くだらないなんていわないで」

 空気をくすぐるような囁き声。



「せめて時間があるときくらい、少しでも綺麗になりたいの。…あなたにみてもらえるように」



 なんもわかっちゃいねえ。こいつは。

 おれが毎日毎朝毎晩、どれだけこいつに目を奪われているか。

 ほんと、くだらねえよ。

 おれが見てんのは、形なんかじゃねえ。



 とはいえ。

 いつもと違ぇ髪形に、心臓が跳ねあがったのも事実だったりする。



 ――結局、こいつの思うツボなんだよな。



 だから。

「ねえねえ、ちょっとは綺麗に見える?」

 おれの顔を無邪気にのぞきこんでくるこいつに、お望み通りの答えを与えてやるのは、ちっと悔しい。

 悔しい、が。

 たまには綺麗になろうとしたこいつに。

 たまには、素直になってやっか。

「あのな」

「なに?」

「…ま、いいと思うぜ」

「ほんとぉー!?」

 おれとしちゃ素直にいったつもりだが。

 いいのかよ。こんな言い方で目を輝かせちまって。ふつーの女は喜ばねえぞ?

 そんなに嬉しがるなよ。

 ……そんなこいつだから。



 止まらなくなった。



「せっかく綺麗なんだけどよ」

「へ?」



「髪…乱すぞ」



 言葉はそこまで。

 ソファにパステルの体を横たわらせ、あとはただもう。

 素直に、沈む。

 柔らかな髪に、口づけを落として。



 少し、ワックスの匂いがした。





某Yさんがスケッチブックに描いてくださった大人っぽいパステルの絵をもとに書いたもの。

大人っぽいのでこんなことになったんだと思います。

……自分の想像力だけではとても作れない雰囲気です////







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