拍手ありがとうございます!!
感謝をこめて…

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なみだ さそう ひと


「なーに我慢してんだよ」

 彼が服の裾でごしごしと、わたしの顔をこする。

「や、やめてよ、ばかぁっ」

 そんなことされたら、こらえてるものが溢れてきちゃうじゃない。

 ぐいっと顔を背ける。逃げるように。

「バカ? はて、そんな名前の奴いたっけか?」

 すぐさま彼はとぼけた表情でとぼけたことをいう。

 …わたしがそんな冗談に付き合ってられる心境じゃないって、わかってるくせに!

 カッとなって右手を振り上げる。ひっぱたいてやるつもりだった。

 でも。

 ――でも。

 気がついて、しまった。



 とぼけた表情のくせに、やけに、とても。悔しいことに。

 眼は、真剣な色を携えている。

 そうして、待ってる。わたしの言葉や。眼の端からこぼすかもしれないものを。

 じっと。



 右手を下ろして、胸の前で握りしめる。



 バカバカ。

 大バカ。

 いつもいいかげんなくせに。

 いつだって意地悪なくせに。

 それは反則だ。



 でもだからって、そう簡単に降参なんかしない。思い通りになんかなってやらないんだから。

「だって、いつも言うじゃない」

 唇を噛んで睨む。

「わたしの泣き顔はブスだ、って。だからあなたの前でなんか」

 ぜったい、泣かない。



 あなたの前だから泣きたくないのよ、なんてことはいわない。ぜったい、いわない。



 口を閉じたのは一瞬。

 その間に彼はさらりとしたため息を吐いた。

「ばーか。おまえ、わかってねーなあ」

「何がわかってないっていうのよ!?」

 挑むように彼を見上げると。

 ニンマリと意地悪な笑顔が、あった。

「おれの前では、ブスになっていいんだよ」



 でも、その眼は。

 わたしを映す瞳は。



 反則だ。



「だーらさ」

 彼は言う。わたしの頭の上にポンと手を乗せて。



「泣けよ、ブス」



 ……くやしい。

 そんな失礼なことをいわれたら、もう。

 降参するしかない。







 せめてもの仕返しに、わたしは彼の胸をブスの涙で、ぐちゃぐちゃに濡らしてやった。

 ざまーみろ、と思った。



 そして、ありがとう、と思った。






キリリク作品として書き始めたのに、書き終わったらリクエストを満たしていなかったボツ作品。

今回の拍手創作はオフでご縁のあった方に捧げたものばかりなんですが、これだけはまだ誰にも捧げていません。

口の悪いトラップがちょっとお気に入り。







ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。