<NAUGHTY>

「あー……やっぱりこうなっちゃったかー……」

 医務室に呼び出されたスティールは、部屋の状況を見た途端そう言った。

 ジオは「それ」をヴァルに預けると、スティールの頭を拳で殴った。

「痛いっ!」
「『やっぱり』って何だ『やっぱり』って。やはりお前が絡んでいたのか」
「だって神父に銃突きつけられて脅されたんすもん! 目がかなり本気だったよアレ! だから仕方なく、幼くなる薬を渡したの!」

 何やってんだあの人、とヴァルが呟いた。そのヴァルの足元では、子供と化したタミフルがけらけら笑っている。おそらく七歳くらいではないだろうか。

「って言うか、先生を子供にしてやるって意気込んで行ったのに、何で神父の方が子供になってんすか?」
「奴が自ら、しかも俺の分までコーヒーを淹れるなんてありえないからな。何か企んでいるかもしれないと思い、こっそりカップを入れ替えてみた」
「先生の方が一枚上手だったって事すか」

 この時、子タミフルがヴァルに絡み出した。

「お前、美人なツラしてんな。俺のタイプだぜ」
「え?」

 きょとん、とするヴァルの胸に、おもむろに手を置く子タミフル。

「でもおっぱいは無いんだな」
「いや、俺はお兄さんだから……」
「うっそだー。こんなキレーなツラした兄ちゃんいる訳ねーじゃん」
「えっと……」

 攻める子タミフル、これが子供でなければ完全に性的嫌がらせであろう言動に困惑するヴァル。それらを見ながらジオとスティールは冷静に言葉を交わした。

「おお、子供に慣れているはずのヴァルが完全に押されている」
「相手が元は神父だから、余計やりにくいんでしょーね」

 そうしている間にも、子タミフルはヴァルに果敢に攻めていく。

「よし、俺の愛人になれ」
「えーっと、そう言うのはよくないと……」
「なんだ、俺に不満でもあんのか? 俺は将来偉大な男になるんだ、今から唾をつけといても罰は当たらないぜ?」
「ええー……」

 最早どう接していいのか分からない様子のヴァルを見て、ジオとスティールはやはり冷静に、

「あいつ、子供の頃からあんな感じだったんだな」
「いや、神父が逆に昔は超絶いい子だったんなら、俺は時間を遡る機械を作って成長過程を見に行くけど」
「ついでに矯正でもしてくれたら嬉しいな」
「他人事みたいな会話してないで、助けてくれると嬉しいんだが」

 とうとうヴァルは、そんな二人に助けを求めた。

 とは言え、手に負えなさそうなのは二人も同じである。

「スティール、元はと言えばお前の所為だ。責任を持て」
「そうしたいのは山々なんすけどねぇー。主任も手を焼くこのやんちゃ坊主、俺が面倒見れるかどうか」
「俺もヤローに見てもらう面倒はないぞ」
「うん君は黙っていようか」

 さてどうしようか、なんて思っていたら、リデルがやって来た。

「失礼します。ここに神父様がお邪魔していると聞いたのですが」

 適任者来た! 三人の意見が一致した。ジオが代表して事情を説明し、

「そう言う訳なんだが、頼めるか?」
「もちろんです。すみません、神父様が迷惑をかけてしまって」

 押しつけた形になって非常に心苦しかったのだが、リデルは迷惑そうな様子も見せずに快く了承してくれた。すぐに彼女は子タミフルに近寄り、目線を合わせるようにしゃがみ込む。

「し……タミフル君、こちらにおいで。お姉さんと一緒に遊びましょう?」
「えーやだー。俺はこっちの姉ちゃんがいい」
「そのお姉さんはお仕事が忙しいの。我儘を言って困らせたらいけません」
「ちょっと待て、『お姉さん』を否定してくれ」
「ほら、一緒に遊びに行きましょう?」

 ヴァルの要望は、華麗に無視された。

 一方の子タミフルは、リデルの誘いに迷うような逡巡を見せた……かと思ったら。

「じゃあ、パンツ見せてくれよ。そしたら一緒に遊ぶ」

 部屋の温度が下がった気がした。後に男三人はそう語った。

 リデルは穏やかな笑みを見せると、

「タミフル君。こちらに来なさい」
「だからパンツ」
「いいから来なさい」
「ひぃっ!?」

 リデルは、悲鳴を上げる子タミフルを引っ張って、医務室を後にした。

 後には、凍りつく男三人が残されたと言う。



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