-帰るその日まで-シリーズ カオルナ小説
「へぇ、そんなおまじないがあるんだ」
「そう!」
相槌を打つルナにシャアラが大きく頷いた。
「とっても良く当たるんですって!」
「そ、そう」
自信満々なシャアラに対し、ルナは途端にどこか戸惑ったような複雑そうな顔をみせた。
「だからぜひルナも今日、やってみて!」
「えぇ、そうね」
やはりどこか弱った表情でルナは頷くのであった。
「未来を見る夢占い?」
「そう。5年とか10年とか先の未来が見える、夢占いなんですって」
シャアラから教えて貰った占いをルナはカオルへと話す。
「良く当たるから、絶対やってって、言われて」
「……5年後の未来をか?」
「そう」
「……それはただ単に当たって欲しいという願望なんじゃないか?」
「……まあ、少しわたしもそう思ったけど……」
「五年後にその占いの内容を覚えているかも、甚だ疑問だがな」
「そうなんだけどね……」
カオルの言葉にルナは頷く。
シャアラの話を聞いていてそれはルナも思った事だ。
昨日の夢ですら覚えていないというのに、数年先まで覚えているとは言い難い。
「でも……、どんな夢みたか、教えてねっと約束されちゃったし」
仕方ないし。とルナは笑う。
カオルはそれ以上その事については言わなかった。
女子は占い好きというのは、もうこれまでの事で分かっていたし、大した興味も初めからない。
「で?」
カオルが話題を変えてくるのをルナは敏感に感じ取った。
「現実逃避は気が済んだか?」
「うぅ……」
カオルの言葉にルナは唸る。
「難しいよぉー。これー」
と、先程とは違う雰囲気で駄々をこねるようにルナは言葉を連ねる。
「いい加減諦めて教えられろ」
「やだ。だって悔しいもん」
カオルの言葉にルナは即答し、モニターを睨む。
「……そんなに嫌か?」
「だって、カオル専門に勉強したわけじゃないのに、専門に勉強してるわたしより、出来るってなんか、悔しいじゃない?」
ふてくされた様子でルナは答えて、カオルはそうか。と頷いてから、自分の勉強へと目を向ける。
「たく。そんなに嫌なら1問1ダールなんて自分から縛りを入れなきゃいいのに」
「……関係ないわよ」
カオルの呟きにルナは視線をそっと横に逸らした。
今の私よりも大人びた顔。
私の特徴とも言えるオレンジ色の髪を小さな手が握っていた。
痛い。と言うが、その顔は特に嫌そうにしているわけじゃなかった。
私の子供だろうか。そう思いながら第三者の視線で私とその赤ん坊を見つめる。
「しっかし、まーよー似てるなぁ」
チャコが感心したようにその子の頬に触る。
「ねぇ。ベルにそっくり!」
嬉しそうに言う言葉に、私はとても驚いた。
「そう……かな?」
と、声がしてそちらを見るとベルが居た。
幸せそうに赤ん坊を見ている。
嘘……。
そう呟いた。
目の前が暗くなっていく感覚と共に。
そして、目が覚めた。
夢に見た内容はよぉく覚えてる。覚えているからこそ、青ざめた。
「ねぇ、ルナ」
とても嬉しそうに近づいてくるシャアラにルナはびくりとする。
「どうだったどうだった!?」
「え、えっと」
「どんな夢を見た!?」
目を輝かせるシャアラにルナは曖昧に笑う。
「えっと……」
見ていない。そう言いたかったが、あまりにも光り輝く瞳に口ごもる。
「えっと……。その。なんか、赤ん坊抱っこしてる夢だった」
「赤ちゃん!?」
びっくりしたように目を大きく開く。
「そ、そう」
「誰の子供!?」
さらにずずいと近づいてきて、輝きは先程の五倍はありそうだ。
「えっと……父親似……と、夢で出てきたチャコが言ってたけど……」
相手を言わないルナにシャアラは首を傾げた。
「旦那様までは見られなかったの?」
そういうシャアラにルナはうんうんと何度も頷く。
「そっかー。残念。でもって父親似っていうのも残念ね。どうせならルナに似たら良かったのに~」
唇をとがらせるシャアラにルナは乾いた笑いをし、話をシャアラの方へと向けた。
これ以上は自分の夢には興味もって欲しく無いために。
あれから月日は流れ。
「しっかし、まーよー似てるなぁ」
チャコが感心したようにルナの腕の中に抱っこされている赤ん坊の頬に触る。
「ねぇ。ベルにそっくり!」
嬉しそうにルナは言った。
「そう……かな?」
ベルは照れくさそうに、でも嬉しそうに赤ん坊を見た。
「なんや、嬉しそうやなぁー」
チャコがベルの足をウリウリとつつく。
「はは。それは、嬉しいよ」
チャコの言葉にベルは首の後ろをかきながら頷いた。
「おまったせ~」
と、シャアラがほ乳瓶を持って部屋に入ってくる。
「ねぇねぇ、シャアラ。私、飲ませてもいい?」
「ええ。どうぞ」
人肌に冷ましたミルクをシャアラは手渡す。
ルナは受けとると、ドキドキとした様子で赤ん坊にミルクを飲ませる。
「飲んでる飲んでる~」
緩みきった笑顔のルナにシャアラは笑った。
「ルナも早く子供出来るといいね~」
「ねぇ~。ほんとよもぉー。おいしー?」
シャアラに答えつつも目は赤ちゃんに釘付けで、ルナの顔には笑顔しか見あたらない。
「かっわいいなー。もぉ~」
「かっわいいでしょ~」
ルナとシャアラの明るい声がいつまでも聞こえてくる、そんな日常の一コマ。
「で? どんな夢を見たんだ?」
「聞かないで」
カオルの言葉にルナは渋い顔で答える。
「……言えない内容だったのか?」
その様子にカオルは眉を寄せる。
「聞かないでってば」
「……余計気になるんだが……」
そう呟いてもルナの口は固く閉ざされたまま。
「……夢だ。余り気にするな」
「……うん」
よく分からないままに励ますカオルにルナはこくりと頷いた。
外れて欲しいと思いながら。
拍手ありがとうございました。
コメントが頂けるとすごく嬉しいです。レスは日記で行ってます。(大体は冬の所で)
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何も無かったらレスを日記でしたいと思います。
・管理人の安心のためには。名前が無い方のコメントが続く時は1とか2とかあると、不安にならなくて済みます(笑)
いや、文を読んで続きかなって分かる時が多いんですけど、分からない時もあるので。(アセアセ)
無くても平気ですが。にょほほほ。
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