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美味しい珈琲をどうも有難うございました!
一息ついて頭をリフレッシュし、又日々精進してゆきます。 こちらは御礼画面第8弾です。よいこの童話シリーズ2、知将編です。 ~まさお姫~ ある王国にまさお姫という青い髪をした美しい、というよりは男らしい姫がいました。このまさお姫には父王 の再婚相手である継母がおりました。継母の名を、ちもといいました。 ちもは普段から暇で寝てばかりいました。そうして、起きると髪を整えるついでに魔法の鏡を見ては、こう尋 ねました。 『おい、鏡……この世で、一番強いのは誰だ……?』 鏡はこう答えます。「一番強いのは女王さま、あなたです」それを聞いたちもは、そうか、と退屈そうにあくび します。ちもは世界一と称えられるほど美しいのですが、本人はそんなことはどうでもよく、それよりも自分と 同等か、それ以上に強い敵が現れ、そうしてその敵が、自分がだらだらと寝ている間に誰かにかっさらわれて しまうことを何よりも恐れていました。ですから、暇さえあれば敵を探して魔法の鏡に問いかけているのです。 ちも女王は、何もしなくてもいいから、という条件でこの国に嫁いできたので、たまに父王に顔を見せてやる 位で、義理の娘であるまさお姫のことには全く無関心で普段は部屋で寝てばかり。当然、まさお姫のことも 自分の結婚式の日に遙か遠目で見たきりで、以後全く会うことはありませんでした。 そうこうしてだらだらと日々が過ぎ、まさお姫が18歳になったある日、ちも女王はいつもの通り、寝起きのま ま、気だるく魔法の鏡に問いました。 『この世で、一番強いのは誰だ……?』「……もしかしたら、まさお姫かも」 『……は?』今までに聞いたこともない答えに、ちもは驚きました。『まさお?……俺の、義理の娘か……』 「……まあ、娘っていうか、息子っていうか……」『……あいつ、男なのか?』 ちもは、そういえばまさおをまともに見たこともなかったと思い、召使いに城内を探して部屋に連れてくるよう 命じました。 『クッ……好敵手ならば、よいが』ちもは久しぶりに暴れられると考えては、涎も垂らさんばかりに上機嫌で まさおを待ちます。ところが、召使いがまさお姫を探し回っているのを、今度はまさお姫の召使いが聞き及び、 まさお姫に急いで報告します。 「姫様!継母のちも王女が姫様を狙っております!急いで森に逃げて下さい!」「え?狙ってる?だって、 義理とはいえ俺の母親だろ?」「何を暢気なことを言ってるんですか!ちも王女は魔女だって城中の噂です よっ?姫様を殺そうとしているに決まってます!」「魔女か……まあ、噂は聞いたことあるけどさ。じゃあ…… ちょっと森にでも遊びに行くか」まさお姫はいまいちピンと来ませんでしたが、召使いの必死の形相にほださ れ、どちらにしろ城内にいるのも退屈なので、とりあえずブラブラ遊びに出ることにしました。 一方――『取り逃がした、だと……?』ちも王女の部屋では、悪魔のようなちもの低音が響きます。まさお が森に逃げてしまったことを知らせにきた召使いは、ちも王女の殺気に、恐怖のあまり気絶してしまいました。 『……役に立たぬ女だ……』その様子に舌打ちすると、ちもは魔法の鏡に再び向かいます。 『とりあえず……まさおの顔を見せてもらおうか……』そのリクエストに鏡はまさおの顔を映し出します。もち ろんちもには兄がいて、兄はまさお似なのですが、そうすると話が長くなるのでそこは省いて、ちもは単純に まさおの背の高さや筋肉をちらりとチェックします。 『悪くない……。――はて、どうするか』ちもは、考え込みました。 一方――森に入ったまさおは、そこで7人の小人に出会いました。定番ですね、しかもよく見ると何故か源 九郎義経似やら平敦盛似な小人たちですが、まあそのことは置いておきましょう。 この7人と仲良くなったまさお姫は、「しばらくここに居たらどう?」という小人のお誘いに、「そうだな。どうせ 暫く様子見た方がいいだろうし、アウトドア・ライフを楽しむことにするか」と二つ返事で、しばし森の小人の家 に滞在することにしました。 さて、翌日になってもまさおが帰って来ないということで、ちも王女は魔法の鏡でまさおの居場所を突き止め ると、まさおが好みそうなレザージャケットやサーフボードなどを小人の家に送りつけ、何とかまさおを城にお びきよせようとします。何だかんだいっても、自分が城の外に出るのはめんどうだからです。ですが、まさおは プレゼントに対してのサンキュ・カードはよこすものの、本人は帰ってきません。 『クッ……なかなか堕ちないか……この俺をじらすとは、面白い……』最早どういう意味でまさおを狙ってい るのか分からないようなセリフを吐いたちもは、プレゼント攻撃に何の効果もないことを悟り、漸く重い腰を上 げました。 『おい……鏡。俺が着替える間、例のリンゴを作っておけ』「え?私、鏡なんだけど?」『……知っているが? それとも……作らない、と……?』ちも王女の睨みに、鏡は震えあがりました。 「いえ、作ります!是非作らせて下さい!」『そうか……ならば、頼もうか……』悪魔……もとい、魅惑的な ちもの笑みに、鏡は急いで1本足で立ち上がりました。 さて、完全なる戦闘服に身を包んだちもは、血の色のような深紅に輝くリンゴを袋に入れ、腰の辺りにその 袋を結ぶと森へと入っていきます。小人の家の前にきても、変装など面倒なので、そのまま手にした二刀で ばっさりと家のドアを破壊します。凄い威力です。それは昼間でしたから小人たちは全員留守にしていました が、まさおは家で寝ていました。「!うわ!何だ何だ?!」物凄い音がしたと思って飛び起きた途端、目の前 に現れたのは戦闘服のちも。 「あれ……?義母さん……?つうか、義父さん、つうか……」まさおは、もちろん継母の顔を覚えていました。 『義母さん、か。悪くない』ちもは、何故だか少しだけ嬉しそうでした。 『時に……お前は、何故城に戻って来ない……?』「え?あーいや、ちょっと森での生活も楽しいかなって」 まさか、お前から逃げたとは言えないので適当に言葉を濁すまさお。ですが、ちもはその言葉に目の奥を光 らせると、急にしおらしく悲しげに目を逸らします。 『せっかく……18歳の誕生日を祝ってやろうと思ったのに……』「え?」いや、俺の誕生日って先月……と、 内心まさおは思いましたが、思いがけないちもの言葉に心が揺れ動きます。生母に先立たれていますから、 義母の心に感動したのです。確かにちもは色々とプレゼントを贈ってきてくれましたから、まさおはすっかりこ の継母を信じてしまいました。「悪かったよ、義母さん。俺、城に戻るわ」とベッドから立ち上がります。 ちもは満足げな笑みを浮かべると、そうだ……と腰に巻いていた袋から、リンゴを取りだしました。『城の庭で、 丹精込めて(鏡が)作ったリンゴだ。これを食べたら、ともに帰るか……?』「お、リンゴか。丁度起きたばっかで 喉乾いてたんだよな。サンキュ」まさおは何の躊躇いもなく、リンゴにかぶりつきました。すると、2~3口食べた ところで……何やらまさおの顔が少しずつ紅潮してきました。 「ん……何だか……熱い……おい、これ、まさか……」熱くて、ちょっぴり息苦しくて、そうして足がしびれてき たまさおの手からリンゴがごろんと落ちると、床にがくんと座りこみながら、ちもを見上げます。 『??鏡の奴……間違えたな。敵愾心を煽る薬を混ぜろと言ったはずなのに……性欲を煽るとは……』そうで す。ちもは、まさおと森で存分に戦うつもりでリンゴを作らせたのです。それなのに、どこでどう間違えたのか入っ ていたのは危険な媚薬。 「ちょ……おま……ふざけんな……」と恨めしそうに睨むことしかできないまさお。しかし、見上げるその目は潤 み、顔は紅潮し、呼吸は乱れています。そんなまさおを見下ろしたちも。おや?何やら妖しい笑みを浮かべ始め ました。 『なかなか……扇情的だな、まさお……』「え……?」『戦う前に……少し、可愛がってやろうか……?』「は… …?」 何やら危険な空気を感じるまさお。大ピンチ!そして、暗転。 その後――まさおはもちろん殺されずに済みました。何故ならちも女王は姫を大層お気に召したからです。 え?どういう意味かって?それは良い子には内緒です。それはともかく、数時間後、まさお姫は少々お疲れで したので、ちもにお姫様抱っこされて城に戻ると、それから2人はお城でとてもとても、それは怪しい位の親密 さで仲良く暮らしたのでした。めでたしめでたし? ジ・エンド |
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