「何…コレ」 自宅兼事務所である万事屋の台所は燦々たる物であったけれど、突っ込むべき所はそこではなかった。 机の上に置かれる、チョコ、チョコ、チョコ。 「ちょこれーとアルヨ」 いつもなら言葉のすぐ後ろに暴言がついてくる神楽も今はご機嫌であり、にっこりと笑って銀時を迎える。わあその顔超カワイイ、なんて胸をときめかせていたがすぐに「イヤイヤイヤ!」とかぶりを振った。 「なんで!こんなに!チョコいっぱいあるの!」 「アネゴとかさっちゃんとか、あげる人沢山いるアル」 「神楽っちゅわはあああん!?神楽ちゃんは銀さんの彼女だよね、そうだよねっ」 「そうだったアルか?」 神楽がとぼけているのは分かっていても、ガーン!と心に言い知れない鉛のような物が降ってきたのを感じてしまう。 台所の隅っこで膝を抱えてしまった情けない彼氏にため息をつきながら、「ぎーんちゃん」と優しく声をかけてみる。 「銀ちゃんのもあるヨー」 「…マジで?」 「ほら」 差し出されたのはチョコレート………が、ついた指。 「どういうことオオオオ!ねえこれどういうことオオオ!作り忘れたろお前!絶対そうだろ!!」 「オトコが細かいこと気にしてたらハゲるってマミー言ってたアル」 細かい!?これ細かいの!?なんて動揺している銀時を眺めながら、「いらないアルか?」と投げかけてみれば。 彼は暫く悩んだ上で「……いる、」とだけ呟いた。 「はい、あーん」 にっこり笑いながらその指を口に放り込むと舌がまとわり付いてきて、銀ちゃんの気持ちみたいに粘っこいな、なんて思ったことは内緒にしておく。 「夜覚えてろよテメー」 不穏な呟きも、今は聞こえないフリをしていよう。 美味しく頂く、チョコレートの君。 (もちろん夜も美味しく頂かれました!) |
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