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 グレタ嬢ちゃんの愛らしさといったら反則的だよな。彼女が笑顔を見せると城の誰もの頬が緩むもんな。陛下の養女だからとかそういう意味ではなく、可愛い子供を前にすると人は何でも許してしまうのだ、というか。
 ちょっと前までは人間を忌み嫌っていた魔族の中で、しかも血盟城に勤めるのは魔族としての矜持が無駄に高い奴等が多いってのに、そんな使用人達をも全員、嬢ちゃんは虜にしているのだから、凄いなんてもんじゃない。たとえ泥だらけの足跡を辺り一面に付けられようと侍女達は誰も怒ったりはしないし、逆に今日はどんな風に手を焼かされるのかと、楽しみにしているようでもある。
 そんなにも愛らしい姫君にはもちろんオレもメロメロだ。彼女にお願いされてしまったら、陛下や猊下と同様、どんな無理難題だって二つ返事で引き受けちまう。

 だが時々、そんな彼女が恐ろしく感じることもある。彼女が陛下の養女になった、そもそもの出来事を思い出しちまうと、少し背筋が寒くなるんだよな。
 いや、また陛下を弑そうとするんじゃないか、などという考えは丸っきりないぜ。そんな疑いはこれっぽっちも持ってはいない。むしろいつか陛下のためにご御自分の命を投げ出してしまうんじゃないかと逆に心配するくらい、グレタ嬢ちゃんは陛下のことが大好きだからな。

 オレが気にしているのは彼女の行動力だ。なにしろ彼女は十歳でスヴェレラから眞魔国まで、ただ褒めてもらいたいというその一心だけで旅をしてきた子供だぞ。スヴェレラ城の地下牢にいたグリーセラ卿をこっそり連れ出したってとこでもう凄いんだが、さらに魔王を殺すために異国の地まで一人でやってきたのだ。最初はグリーセラ卿と一緒だったらしいが、途中からは一人きりでの行動だぞ。何も訓練を受けていない十歳の子供が、自主的に敵国に一人で乗り込んで王城の内部まで入り込み、魔王を短剣で襲っただなんて。

 そんなお姫様が他にいるか? 後で聞いたが、彼女はスヴェレラ城の抜け道や隠し通路を衛兵達より知っているらしい。だがあちらでは大事にされてなかったようだから、王や王妃が教えたとは考えにくい。てことは、その抜け道や隠し通路は自分で発見した可能性が高いよな。嬢ちゃんの性格からいって、きっと誰にもかまってもらえなくて寂しくて、寂しさを紛らわすために一人であちこち歩き回っているうちに発見したんだろうとは思う。地下牢へもそうやって偶然に入り込み、グリーセラ卿を見つけたのだろう。一緒に国を出るまでの関係を囚人と築くほどに、彼女の周りには誰もいなかったってことだ。

 嬢ちゃんの悲しい過去を想像すると泣けてくるが、しかし話はここからだ。そんな恐ろしい行動力がある彼女が、まだ十歳だということがオレは怖いんだ。これから先、彼女がどんな成長をするのかということが怖いんだよ。この一連の行動を見るだけでも将来がすこぶる不安だってのに、嬢ちゃんときたら毒女に弟子入りをしてしまったんだぞ? さらに軍曹殿のところにも入り浸っている。さらにだ、さらにツェリ様のことも大好きで真似を繰り返しているときている。

 な、怖いだろ? オレが何を言いたいか、よぉっく分かるだろ? 眞魔国三大魔女の二人と鬼軍曹が身近にいる少女が、今後どんな成長をいたすのかって考えたら、怖いなんてもんじゃねえだろ?

 今は寂しくないとはいえ、好奇心旺盛な彼女のことだから、この血盟城の中も探検しているだろうしな。スヴェレラ城に入ったことはないから知らねえが、きっと血盟城ほどは古くも、入り組んでもいないだろう。
 しかしそれが厄介なんだよな。この城は古すぎて危険なんだ。地の精霊の加護とやらがあるから、大規模な改修はほとんど必要とされなかった。そして長い年月の中で昔の記録が紛失するのはどこの国でもあるもんだ。元々、抜け道やらなんやらの類のことを知るのは王やその家族、そして一部の側近だけだが、魔族の場合は人間に比べて寿命が遥かに長い。そして誰もが昔のことは忘れたりするもんだ。数年前の出来事でもそうなのに、何百年もの昔の記憶はなおさら曖昧になるから、うっかり次の代に伝え忘れた、なんて事が幾度か起こってしまったらしい。

 だから今ではもうどこに隠し通路があるのか、全部は把握されていない。全てを知っているのは建築に携わった猊下と眞王だけだろう、と隊長が言っていた。母上から避難経路はいちおう教えられたけれど、この城には難攻不落の盟約があるから使ったことはないよ、と奴は笑っていたが、その話が真実だとすると余計に危険だ。
 魔王の息子で城の警備責任者でもあるコンラッドが把握していない隠し通路がここにはウジャウジャあるってことだろ? もしも嬢ちゃんが変な所へ入り込んだまま閉じ込められて出てこれなくなったら、って想像するとゾッとする。その時に猊下が居ればいいけど、猊下も陛下も長期で国を空けることが多いしな。

 なので万が一のために隠し通路を全部把握しときたいんだが、猊下は教えてくれなかったんだよな。さーねえ忘れちゃったなーとか言って人のことを煙に巻くんだぜ、冷たいよな。まあむやみに教えたくない気持ちは分かるし、一介の兵士が知ってていいもんじゃないって理由も判るが、嬢ちゃんのためなんだから教えてくれたっていいのにな。つうかもしもグレタ嬢ちゃんに何かあったら一番後悔すんのは自分のくせにな。

 次に猊下がこちらにいらした時には絶対訊き出そうと決めちゃあいるが、まずは自力で少しくらいは、とオレは血盟城を探検することにした。かなり困難なのは判っちゃいるが、これもグレタ嬢ちゃんの、ひいては魔王陛下や大賢者様の笑顔のためだ。
 なっ? こう見えて結構、お庭番って大変なんだぜ。そして忙しいんだ。だから気安く用を頼まないで欲しいんだけどねぇ。


 2016.4.3



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