「Lovely DOLL・1」 「ちわ〜。お荷物お届けに上がりました〜」 ブラックキャット・大和の配達員がそう言いながら、数人掛かりでえっさえっさと運び込んできたのは、人一人分はあろうかという大きな荷物だった。 受け取りに認めを押しながら、左近は開いた口がふさがらなかった。 「毎度〜」 帽子を脱いで挨拶する配達員には目もくれず、左近は玄関先にでん、と置かれた巨大な箱を見下ろした。一体何の嫌がらせだ、と溜息をつく。それも道理、差出人は長年の付き合いである悪友からのものだったからだ。 取りあえず中身だけ確認しようと段ボールを開けてみると、中には木製の棺が入っていた。何の冗談だか知らないが、真っ赤なリボンが掛けてあり、その上に一通の白い封筒。 うんざりしながら手紙を開封してみる。 『前略 一体余ったからやる。好きにしてくれ。あ、返品は不可だから。 後略 天下無双の天才科学者・雑賀孫市様』 「阿呆か、あいつは。全然わかんねぇよ」 左近は、全く内容の伝わらない手紙をくしゃくしゃに丸めて屑篭に放り込んだ。 「…ま、あいつが送って来たってことは、ドールなんだろうが…」 アンドロイド製造業界では屈指の天才とか呼ばれている男の、ニヤケた顔が左近の脳裏に浮かんだ。あいつの作るメイド型アンドロイドは、その筋では大絶賛されているとか。どうせ自分のスケベ心を満足させてるだけだろうが。 そう思うとげんなりする。主人の言う事に絶対服従のドールなど、左近の趣味ではない。現在妻も恋人もいない状態でありながら、左近は愛玩ドールとしてのアンドロイドすら身辺に置いていなかった。 「取りあえず、見るだけは見るか」 古式ゆかしい木の棺に手を掛け、左近は蓋を開けた。 「これは・・・!」 眠れる森のアンドロイド。真っ白な布団に横たわるのは、クラシカルな黒のロングメイド服に身を包んだ、世にも美しいドールだった。明るい栗色の髪、華奢な躯つき、瞼を閉ざした面輪は硬質な美しさに満ちていた。 だが、合わせた両手の下の胸は平板で、孫市好みのグラマラスな乳は見あたらない。 アレが男性型を作るのは稀有なことだが、本当に男だろうか?メイド服のスカートに手を伸ばし掛け、左近は慌ててその手を引っ込めた。 幾ら何でもスカートを捲って確認してみるなど、変質者じみた行為だと言う羞恥心が働いたのである。 ドールの手に「使用方法」と書かれた紙が握らされている。その紙を手に取って見た。 『お姫様は王子様(今回はおじ様だけどな!)のキスで目が覚めます』 「・・・アノ馬鹿、今度あったら絶対殴ってやる」 垂れ目でニヤケた男だが、孫市が案外ロマンチストだという事を、左近は初めて知ったのだった。 拍手、押して下さってありがとうございます!宜しければ一言どうぞ^^ 続き物の未来編です。全四話+おまけ一話です。 |
|