「部長様、天才?」 「部長様、バイブル?」 「部長様、世界一?」 「部長様、マンセー!」 ドンガドンガという怪しげな太鼓の音と共に、一斉に平伏すのは、愚かなる狂信者ども…ではなく。 「何ね、ここんテニス部は怪しげな新興宗教でもやっとうとね?」 「あぁ? 何やねん、おんどれ、オレらの部に何か用か?」 さっと立ち上がった少年は柄の悪い大阪弁で威嚇したが、不意に闖入してきたのは、それよりも大柄な男だった。 信者ども、ではなく部員たちに崇め奉られて気持ちよさそうにしていた部長様は、気だるげに背後を振り返って一言。 「オサムちゃ?ん、これ、追い出して」 「あぁ、あかんて、白石ぃ。3コケシやるから」 「コケシいらへんて」 「何じゃ、ここらじゃ、入部希望者ば、そげん扱いすっとね?」 「入部希望やて?」 「そうたい。千歳千里」 「…謙也?、様子見」 「任しとき!」 勢いよく飛び出してきたのは、先ほどの少年だった。 「あ?、先輩、部長の前でええとこ見せようと…」 「ええやないの。ほっとき」 「ふ?ん、きさんが俺ん相手してくれっと?ま、よかよ。外出んしゃい」 「ええ度胸やな、自分。俺がケチョンケチョンにしたるで」 少年二人は出て行った。 「ええんですか、部長。ケンヤ先輩、本気でやるつもりみたいやけど…」 可愛い後輩がそういうと、部長は秀麗な顔に華やかな笑みを浮かべた。 「そう簡単にはいかへんやろなぁ」 「どういう事です?」 「あれ、九州二強の一人やし」 「・・・え?」 ふふふ、と謎めいた微笑を残し、部長様はお呼びがかかるまで、のんびりと昼寝を決め込んだのであった。 |
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