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※権現が真っ黒でDV 飴が歯に当たってかろん、とまるい音がした。 嫌いだと言った黒飴の味が口に広がる。 わざと、頬に押し付けるように、口いっぱいに塗りつけるように家康の舌が飴を押す。 「う、ぐ、ふ」 Fuck up,Damn you、頭の中でわめきながら肩口の着物を掴んで押してもびくともしない。 黙っていれば直に気が済む。体を離して、ははは冗談だ、と、笑って、なかった事にする。 この嫌がらせを悪ふざけの延長にして誤魔化す。 わかっていた。 家康の舌が黒飴を自分の喉の奥に押し込む。 舌の付け根に転がり込んだ飴を更に押す、舌に塞がれた呼吸のせいで恐慌をきたした。 歯を立てる。ひるんだ体を膝で蹴って、闇雲に腕を振り回す。 指の先に冷たくて濡れた、固い膜が触れた。ハッとして体が固まる。 腕を引く時分の口から舌が抜けだして、黒飴が口の中に取り残される。 吐き出すのも忘れて呆然と腹の底が冷えていくのを、痺れた手足からざわざわと血が抜けていくのをただ、感じていた。 右目を押さえて東照権現が唸る。 粘膜に触れて濡れた指先が空気に晒されてすうと冷えて、もう何もない眼窩が疼いた。目。それを、傷つけた。 冷たい汗が全身から噴き出る。 「いえや、」 心配して、腕を伸ばした。その手首を肉食獣の跳躍の勢いで伸びた家康の手に捉えられて引き倒された。 後頭部をしたたかに打って勢いで飴を飲み下す。ぐう、と呼吸が一瞬止まった後、強烈な違和感が残った。咳き込む。 咳の勢いの痙攣すら抑えこまれた。跳ねる体のみぞおちに膝が乗る。肉厚の大きな手の平が、手首の血流まで阻害する勢いでぎりりと手首を拘束する。指が喰い込むというより絡みついて、目を開けるまでもなくまずいとわかった。 「いえやす」 喉が渇いてはりついた。からからの口の奥が飴の形に広がってまだ痛い。 「やめろ」 まばたきした左目にグロテスクな内蔵の色を纏った舌が迫る。 「家康!」 失うと考えるのすら恐ろしい左目を閉じて、懇願の響きで名前を呼ぶ。それを笑った息が顔にかかって、もうだめだ、と絶望した。瞼の隙間に入り込んだ舌が睫毛をなぞってこじ開ける。 家康の舌が内側に柔らかさを満たした硬い膜を蹂躙する。 出てくる涙まで舐めとられて、何故か勃ったのを嘲笑されて、先をいじられる、それが。 気持いいと、体が言う。恐ろしいと、心が言う。 |
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