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カラ松…いいですよね…これが、沼…



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山なしオチなし意味なし話08


飴を食べたいという次男に渡そうとして、今口にしてるのが最後と言う夢主。
口移しでも構わないぞと気取ってくるので、襟首掴んで上向かせる。抵抗する次男と舌を出す夢主。観念して口を開けようとした瞬間におそ松と一松が障子を開ける。
「これどういう反応するのが正解?」「お邪魔しましたじゃないの?」「あ、そうか。いやでも家の中でさすがに同じ顔の弟が抱かれるのを見逃すのは何かなぁ」
「ち、違うんだ、ブラザーっ!」「チッ、いいとこだったのに」



松野家二階の六つ子の部屋。私とカラ松くんはソファに並んでのんびりと過ごしていた。
私はふと鞄の中から個包装の飴を取り出して、口に放り込む。甘いオレンジの香りが口に広がった。
「飴か?」
「うん。食べる?」
「いる」
カラ松くんは餌を待つ小鳥みたいに口を開ける。はいはいと笑いながら鞄に手を差し込むが、私の右手は一向に飴に辿り着かない。
「ごめん、最後の一個だったっぽい。もうないなぁ」
肩を竦めたら、カラ松くんは顎を突き出して前髪を掻き上げる仕草をする。
「フッ、ノーキディングだぜ、ハニー。飴ならあるじゃないか」
「どこに?」
私の問いに、彼は指差しで応えた。指先は私の口元を示す。
「食べかけだよ?」
「飴をくれると言ったのはハニーだろ?」
カラ松くんは流し目で挑発する。
しかしそれは、私に断られる前提の冗談だ。無理難題を吹っかけられた私が一笑に付し、やれやれとカラ松くんが溜息をつく。

「分かった」

お決まりの流れに逆らった理由は、有り体に言えば───ムラッとしたからだ。本当は気弱なくせに強がって、私の関心を買おうとする、その態度に。
私はソファから立ち上がり、カラ松くんの襟首を掴む。片膝を彼の股の間に置いて退路を断った。
「…は、ハニー?」
黒目が揺れて動揺が窺える。反応がいつもと違うことに今更気付いても、もう遅い。
「じゃ、口開けて」
「えっ!?」
「食べかけでもいいってことは、口移しでもいいってことだよね?」
「あっ、え、や…ハニー、それは…っ」
「早くしないと飴溶けちゃうから。ほら、あーんして」
私の顔色を窺うためにカラ松くんの顔は上向いている。私は彼を見下ろす。顔は近い。
「ま、待て、これはさすがに───」
「嫌?もしかしてさっきのは、私をからかってただけってこと?……悲しいなぁ」
私は拳を口元に当てて眉を下げてみる。効果は抜群だったようで、カラ松くんの目が瞠られた。
「ハニーっ、ち、違う!オレは、その……」
「だってカラ松くんの態度はそうとしか思えなくて…」
「ッ…ああもうっ、分かった!する!やればいいんだろ、やればっ!オレは知らないからなっ」
自棄になったカラ松くんが顔を真っ赤にして叫ぶ。責任は私が取れ、そういう意味合いだろうか。卑怯だ。まるで私が悪者みたいじゃないか。
でもギュッと目を閉じて口を開けるカラ松くんの眉間には深い苦悶の皺が刻まれていて、つい笑いそうになる。
私は一層顔を近づけて、舌先に載せた飴を彼の───


刹那、廊下から部屋に続く襖ががらりと開いた。


おそ松くんと一松くんと目が合う。
「これどういう反応するのが正解?」
きょとんと立ち尽くす長男の肩を、四男がそっと叩く。
「とりあえず十秒後くらいに出直したらいいんじゃない?」
「あ、そう?でも襖一枚隔てた先で、カラ松がうらやまけしからんことされてるのを見過ごすのもちょっとなぁ」
「それは確かに」
どうしよっか、と二人は腕組みをする。
「待てっ、違う!違うんだ、ブラザー!」
目を開けたカラ松くんは私を突き飛ばすこともできず、私の両腕をしっかと掴み、ゆっくりと横に移動させた。こういう時まで紳士なのは尊敬に値する。
「…チッ、あと少しだったのに」
「ちょっとカラ松、俺らの好感度が奈落に落ちた舌打ちが聞こえたんだけど。お前責任持ってどうにかしろよ」
「オレが!?」
「てめぇしかいねぇだろうが!」
一松くんの鋭い眼光を向けられてカラ松くんは半泣きになった。ここまで理不尽だとさすがに哀れに思えてくる。

「オレ悪くないのに…」

正直すまんかった。








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