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では駄文ではありますが久々(……?)にお礼文を書いてみました。第十弾。



Call me!!(コK)



「……あーあ」

今夜の仕事は全く以って『どこまでも張り合いが無かった』。

イギリスから帰国したままの白馬は、オレが警視庁へ送った予告状を確認していたのにも関わらず、何故か他県で事件に巻き込まれて戻れないとかで不在。
中森警部は風邪だというから、以前のように青子にそう言わせるよう仕組んだのかと思いきや、本当に起き上がれない高熱の風邪で寝込んでいた。
そして……名探偵は毛利父娘と共に関わった事件が長引いて予告時間に間に合わないまま不在。
となると優劣に関わらず、指揮官のいない警察官や、やたら数だけ多い機動隊員など当然烏合の衆。
中森警部の部下は以前の様な手を使うだけでオレを脅かす事もなく、あっさりと手の平に余る紫の乙女は誰に見咎められる事もなくこの手で月に翳したし、目当てのものではなかったから直ぐに返却もしたが、当然ながらそちらもスムーズに行うことができた。

では肝心の奴らはというと……今回はそちらも姿を見ることはなく……正直肩透かしでも喰らった気分だった。

別にオレは盗みを楽しんでいるわけでもなければ義賊でもなし、天地がひっくり返っても奴らの来訪を心待ちにしている、なんて事も無いし、持ち主が悪事を働き誰かが困っている……なんて事も有難い事になかったので、おやじの教えを守って現場では一応気を張っていた分、溜め息も漏れるってもんだ。

ダミーを追って二駅も三駅も向こうまで走り去った警官たちをビルの屋上から見下ろして、オレは頭を掻いた。
夕方に青子の家にお邪魔した時の警部の口惜しそうな顔が頭を過る。オレと青子に止められなかったらきっと現場に来ていたに違いない。
明日も見舞いに行こうかな、なんてキッドの衣装を纏ったまま考えることではない事を頭の隅に追いやって、逃走用のハンググライダーを装着するとダミーとは逆方向へと滑空する。

その時までは確かにスムーズだったのだ。まさかいるはずのない人物に足止めを食らうなど、本当にその瞬間までオレは予想だにしていなかった。

考えていた着地点の幾つかが突発の事故で封鎖されているエリアと近かった為、軌道を変えて地上に降りる前に、取り敢えず目に付いた小さな廃ビルの屋上へ降り立ったオレは翼を畳むのも忘れて後退った。
「……よ、よぉ……」
「……何でいるのかって顔だな」
図星だが、いやいや、逆光でそこまでは見えていないはずだ。落ち着け、とオレは自分に言い聞かせる。
「思ったより高速道路が空いてたんだよ。お陰でついさっきこっちまで戻って来たんだが、オメーが飛んでるのを見てここに寄ってみたんだよ」
「ほー」
それで、と暗にその先を促してやると、名探偵はこれでもかというほど深い溜息を吐いた。
「……オメーの事だ、宝石はとうに返してるだろうし、中森警部の居ない二課はダミーを追って逆方向。ま、オレとしても現場でもないこんなところで宝石も持たないオメーを捕まえるのは面白くもねぇ」
「……その心は?」
だから何でここにいるのかと少々呆れた声音でオレが言うと、名探偵は眼光を鋭くした。
「……オメーも知っての通り、オレは事件に巻き込まれてた訳だが」苛立ったように名探偵は前髪をかき上げてくしゃりと掴んだ。「事件は解決したのにすっきりしねぇんだよ」
「……はぁ?」
事件を解決したのにすっきりしないのと、捕まえる気のないオレを追って来た事に何か関連するものはあるのだろうか。
訝るオレに名探偵は三度口を開く。
「……事件の被害者の一人だったんだが、オレの呼び名が気に食わなかった」
「……ふむ」
変なあだ名でも付けられたのだろうか。といって、オレにそれが関係するとは思えないのだが。
「おい、キッド。今日は随分口数が少なくねぇか?」
「……そうか? というかオメーの口数が多いだけだろ」
事実そうだったし、意図するところが分からずに首を傾げると、名探偵は苦虫を噛み潰したような表情をした。
「……名探偵?」
そろそろ回りくどいのは止めにしようぜ、と言おうとしたオレはガバリと顔を上げ、目を爛々とさせた名探偵の姿に思わず口を閉ざした。
「それだ!!」
「どれだよ!?」
「オメーの、その呼び方だ!」
ビシリと指を突き付けられて反射的にオレは半歩後退る。
「め、名探偵……?」
「そうだ」
何処か満足そうな笑みを浮かべた名探偵は腕を組んで何度も頷く。
つまり、その被害者に『名探偵』呼ばわりされたのが気に食わなかったという事だろうか。
「……いや待て。何が問題なんだよ。お前のその推理とか行動が認められたんだろ?」
「……そういうニュアンスじゃなかった。ガキだからって上から目線というか、小馬鹿にされてるような……」言いながら思い出したのか、名探偵はオレをギロリと睨め付けた。「だからオメーが呼べ」
名探偵と呼んで欲しいということかと理解はしたものの、素直にこいつの言うことを聞いてやる義理はない。
「呼べって何でオメーが上から目線なんだよ……」
「……分かった。じゃあ一回だけでいいから」
いやいやオメーどう見ても一回で納得する顔してねーじゃねーかと言いたかったが、面倒になってきたオレは仕方なく口を開く。
「……わーったよ。一回だけだからな?」
「おう!」
いつでも来いと言わんばかりに、ここに来て漸くいい笑顔を見せた名探偵はポケットの中で何やら手を動かしている。録音でもするつもりだろうか。

「……名探偵」

まぁいい。丁度張り合いが無くて少しばかり退屈していたし、とびっきりの大サービスだ。舞台に立っているつもりで少し声のトーンを落としつつも聴き取りやすい、落ち着いた声音を意識する。

「……キッド」

オレの調子に引き摺られたのか、名探偵の声もさっきより低く好戦的な声色になっている。ゾクリと背筋を這うそれは不快なものではない。互いの笑みが知らず不敵なものになったその時、不躾な着信音が耳を打った。

「……!」
引き攣った名探偵のその顔から、恐らくあの彼女からのものだと判断して、その意識が逸れたことを幸いに、オレは広げたままの翼を一気に畳んでマントを翻すと素早く一般人に変装する。
「……じゃーな、名探偵!」
「え、おい!?」
メールの文面に気を取られている名探偵を置いて、廃ビルの屋上の手摺に引っ掛けておいたワイヤー付きの金具を数度引っ張って強度を確かめると、辺りを確認し、壁伝いにスルスルと降りて行く。ワイヤーはくるりと角度を変えると金具が外れる仕組みにしておいたので、最後に巻き取って証拠は残さない。名探偵は来た時同様、適当に帰るだろう。

今晩は張り合いのない現場だったが、最後がこれなら悪くはない。
家に着くまでの間、周囲に目を配りながらもオレは知らず鼻歌を歌っていた。

終わる。

正月特番アニメでコナンさんがゲスト(タチの悪い被害者)キャラとえびぞーさんに名探偵呼ばわりされてたのにモヤっとしてたので書いてみました。ちょっとだけすっきり( ̄▽ ̄)
多分メール着信で録音はおしゃかになってると思います。どんまい名探偵w



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