《マユリとルキア》

頭を下げようと腰を下げようとした所で顎を掴まれて無理やり上を向かされた。

「ふん…阿近が執着するほど良い物には見えんガ…」

マユリの言葉は不躾で無遠慮だったのでルキアも目上に対する態度を捨て平然と悪態をついた。

「何をされている。指を噛み千切ってから謝っても遅いぞ」
「毛なみは良さそうだが中身は野育ちカ」

興味を失ったようにマユリは手を離したが、
腹の虫が治まらないルキアは去ろうとする背に飛び蹴りを食らわした。
背中の痛みと廊下に倒れた衝撃で目を白黒させているマユリの胸倉を
ルキアは激昂させる隙を与えず締め上げて微笑んだ。

「失礼、涅隊長の背中に毒蝮が襲いかかろうとしていたので」
「はア?!」
「大事がなくて良かった」

どの口がほざくかとマユリは抗議したかったが、
襟元を締め上げてくる細腕は見た目を裏切り力強い。
このままでは落とされかねないと、降参の意味で両手を上げる。
ルキアは優雅な所作で手を離しマユリが反撃してくる前にさっさとその場を後にする。

取り残されたマユリは呆然と呟いた。

「阿近はなんという奴を気にいったのか…物好きナ」

マユリに一番言われたくない言葉を賜った阿近は研究室で一人くしゃみをした。



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