拍手ありがとうございます。お礼SSは風千現パロの連載です。
社長さんの風間さんとOL千鶴ちゃんのラブコメです。そういうのが平気な方はドウゾ




シュガーベイビーラブ


 10 運命の二人
 




 人事課に辞表を提出してから二日たった。
 とはいっても、辞表を提出したからといってすぐに辞められるわけがない。特に、千鶴の採用は例外中の例外で推し進められたのだから、人事部長から「社長にお伺いをたてないと」と濁されてしまった。そうなるだろうと千鶴も思っていた。
 そして――。


 千鶴が仕事から帰って来て、簡単な夕食を済ませた時。アパートのチャイムが鳴った。
 千鶴はハッと息を呑み、チェーンをかけたままドアを少しだけ開けた。
 そこには予想通り風間が立っていた。今まで見たことがないような仏頂面で。
 そんな顔をさせてしまう心当たりが大ありな千鶴はぎこちなく笑い、すぐにチェーンを開けて風間を招き入れた。
「こんばんは。予定では明日の夕方、シンガポールからお戻りのはずなのに。どうされたんですか?」
「俺の秘書が勝手に辞表を提出したと聞いたからな。なんとか予定をやりくりして戻って来たんだ」
 風間は忌々しげにそう言って千鶴のアパートに上がったので、千鶴はまたぎこちなく笑った。そして風間をローテーブルの前に案内し、お茶を出した。
 だが風間は出されたお茶には手を付けず、前に座った千鶴を睨むように見ていた。
「――何故、辞表を出した?」
「……」
 何も言わない千鶴に風間は苛立ったようにまた質問する。
「勤務内容や雇用条件に不満があるのか?」
「いいえ。そんなことはありません」
 千鶴はそこで言葉を切り、大きく息を吸ってある提案をした。
「風間さん、トランプしませんか?」
 千鶴の突拍子もない提案に風間は切れ長の瞳を大きく見開いた。
 目を丸くして当然だ、仕事を辞める辞めないの話をしている時にトランプをしようと言う人間などいるわけがないのだから。
 我ながらおかしなことを言っているなと思った千鶴は小さく笑い、小物や雑貨を入れている棚の引き出しからトランプを取り出した。
 そして風間の前に再び座り、トランプを箱から取り出して風間を真剣な顔で真っ直ぐに見た。
「ハワイで教えてくれたポーカーです」
「――何故だ?」
 何故、こんな時にポーカーを?と風間の目が訊ねているので、千鶴はその目をじっと見て答えた。
「また賭けをしましょう」
「賭け…?」
「はい。もし風間さんが勝ったら、辞表は取り下げてもらって結構です。今まで通り私はあなたの秘書として働きます。――あなたがいいとおっしゃるまでずっと」
「お前が勝ったら?」
「私が勝ったら…」
 千鶴は目を伏せ、手にしていたトランプをゆっくりと切り出す。
「私の望みは私が勝った時にお話します」
 風間はその言葉の真意を探る様にじっと千鶴を見る。
 当然〝千鶴の望み〟が気になるだろうが、風間はそれ以上問い詰めることはしなかった。
「いいだろう。その条件でやろう」
「ありがとうございます」
 条件を呑んでくれたことに千鶴は安堵し、切ったカードを配った。
 そして二人でポーカーを始める。
 あの日の夜と同じようにチェンジは二回。役が強い方が勝つというまさに運試しだ。
 会話はなく、黙々と二人でカードを変えていく。大した時間はかからない。けれど、千鶴の心臓は早鐘を打ち続け、壊れてしまいそうだった。
 そして二回チェンジが終了した後、風間は苦く笑った。そして首を振りながらテーブルの上にカードを広げた。
「ノーペアだ」
 千鶴は食い入るように風間のカードを見た。
 確かに広げられたカードはスートも数字もバラバラでなんの統一性もない。
 それに対して千鶴のカードは――

「フラッシュです」

 スートすべてがハートに揃ったカードを千鶴は震える手で並べた。
 初めて出したワンペア以上の役に、千鶴は自分自身のカードでありながら息を呑んでみていた。
 風間も同じように千鶴のカードをじっと見ていたが、やがてフッと笑った。
「お前の勝ちだな」
「……」
「言ってみろ、お前の望みを。こんな勝負まで持ち出したということは、その望みは俺にしか叶えられないのだろう?」
 静かな声で風間がそう言う。
 そう、これは風間にしか叶えられない望みだ。なので千鶴は小さく頷き、深く息を吸って呼吸を落ち着けた。
「まず、私の望みは二つあるんです。二つ言ってもかまいませんか?」
 千鶴の言葉に風間は小さく笑う。
「一回の勝利で二つの褒賞をねだるとはなかなか欲が深いが…我が妻の望みだ。――言ってみろ」
 千鶴は膝の上で拳を握り、ごくりと固唾を呑んだ。そして掠れた声で望みを口にする。
「あなたの秘書は辞めたいんです。どうか辞表を受け取って下さい」
 風間は当然渋い顔をする。そんな風間が何かを言いかける前に、千鶴は話を続ける。
「そして私のもう一つのお願いは…」
 そこで言葉を切り、千鶴は畳の上に手をついて、先ほどよりしっかりとした声で一番伝えたかった望みを口にした。

「結婚を前提としたお付き合いをあなたに申し込みたいんです」

 何を言われたのかわからなかったのだろう、風間は驚いたように千鶴を見るだけで何も言わない。なので千鶴は訥々と自分の想いを告げた。
「あなたに相応しい女性になるためにはどうしたらいいのかなってずっと考えていたんです。あなたのそばはとても心地が良くて、あなたは私が一番ほしいものをいつもくれて…。甘えてしまうとでも言うんでしょうか、あなたに頼り切ってしまいそうになるんです。でも、それじゃ駄目だな、あなたの隣に立つ女性にはなれないなと思って。だから…」
「だから秘書を辞めたいのか?」
「はい。私がちゃんとあの会社の採用試験に合格して秘書課に配属されているのなら堂々とあなたのそばにいれたのかもしれませんが、でもそうではありませんし…」
 社長の独断で千鶴の秘書課勤務は決まったのだ。コネ入社どころの話ではないのだから、後ろ指を指されて当然だ。
 いや、陰口を叩かれるのは平気だ。千鶴に出来ることは微々たるものではあるが、だが秘書として風間の仕事を支えたいとも思う。
 だが風間の妻になるのなら、風間から用意された場所に甘んじてはいけないのではないか。
 一生、風間を支えたいと思うのなら、尚の事。
 そう考えるようになって千鶴の転職への意識も変わった。
「私には何もありませんけれど、でも、少しでもあなたに近づきたくて。あなたにふさわしい女性になりたくて。そのためには――まず、あなたの傍から離れなければいけないんじゃないかなって思ったんです」
「……」
 風間はじっと千鶴を見つめたまま話を聞いていたが、低い声でふと訊ねた。
「もし、俺が勝っていたらどうするつもりだった?」
「――秘書を続けるかわり、告白はしませんでした」
「何故。そこまでの覚悟があって、何故告白をしない?」
「風間さんのような人に告白するんです。運試しをしたかったんです」
 詰るような口調の風間に千鶴はふふっと笑って答えた。
 今まで見つかることのなかった正社員の働き口が見つかったら。辞表を保留とはいえ人事課で受け取ってもらえたら。こうして風間が追いかけてきて、何故秘書を辞めるのかと言ってくれたなら。そして風間とのポーカーに勝てたなら――
 千鶴の力ではどうすることも出来ない〝運〟。いつも千鶴のそばをすり抜けていってしまう幸運を、今回ばかりは自分の力で引き寄せて見たかった。
 引き寄せるだけの〝運〟がなければ、風間の隣になど立てないだろうから。
 千鶴は晴れがましい思いで前に座っている風間を見た。
「一世一代の大勝負に出たんです。でもまさか、フラッシュが出るなんて思いませんでした」
「――成程。負けていい勝負だったわけか」
 風間は呟くようにそう言うと、千鶴の手を取った。
「何度も言っただろう?俺の伴侶になるのはお前しかいない」
「はい…」
「秘書を辞めるのは正直面白くないし、秘書課としても痛手だろうが――だが、お前がそこまで考えた末の選択なら、認めるしかないな」
「――ありがとうございます」
「秘書ではなく俺の妻になるんだな?」
「はい」
 確認するかのような風間の問いに千鶴は深く頷き、ギュッと風間の手を握り返した。大きくてあたたかな手だ。この手を握り返すことが出来て嬉しい。
「風間さんが私の一番ほしいものをくれるように、私もあなたのほしいものが何なのかを考え、そしてあげたいですから…」
 以前、この部屋で風間が真剣な表情で言った言葉。それを今度は千鶴が風間に返した。
 だが、風間は「そうか」と呟いておかしそうに肩を揺らして笑ったので、千鶴は少し戸惑った。
「風間さん…?」
 冗談と思われたのだろうか?
 そう思った千鶴の頬に風間が自分の片手を添えた。そして目を細めて千鶴を見つめる。
「いや。まさか誰かに何かを与えられる日がくるとは思わなかっただけだ」
「……」
「最愛の我が妻が何を俺にくれるのか…楽しみにしている」
 風間は嬉しそうにそう呟くと、少し顔を傾けた。
(あ…)
 ゆっくりと近づいてくる風間の顔に、今からキスされるとわかった千鶴はギュッと目をつむった。
 恐らく、あの日、キスはしているはずだ。でも、記憶のない千鶴にしてみたらこれが初めてのキスだ。
 千鶴が息を止めた瞬間、風間の唇が千鶴の唇に触れた。そのあたたかさと柔らかさに千鶴は驚く。
「く、唇ってやわらかいんですね…」
 触れただけの風間の唇が少し離れた時、千鶴は掠れた声で思わず呟いてしまう。すると風間は愛おしそうに千鶴を見つめた。
「――そうだな」
 風間は千鶴の頬をするりと撫でて小さく微笑んだ。
「だが、俺はもう知ってた」
 風間はそう言うとまた千鶴にキスをする。今度は触れるだけではない、深いキス。
 するりと入って来た風間の舌に千鶴は驚いたが、すぐに目をつむって応えた。ずっと前から風間とこうしたいと思っていたから。
 とはいってもキスの仕方などわからない。なので風間の動きにあわせておずおずと舌を動かす。顔の角度を変え、風間が唇を食めば千鶴もそっと風間の唇に歯を立てる。手をつないでいるだけでは心許なかったので、千鶴は風間の背に手を回した。そうしてなんとか風間のキスについていく。
 風間も必死にキスについていこうとする千鶴に気付いたのだろう、吐息すらも奪われてしまいそうな深いキスになる。だが、性急でも乱暴でもない。どこまでも千鶴を思ってくれているのがわかる。
 それが嬉しかった千鶴は風間の背に回していた腕に力をいれた。
「ん…」
「千鶴…」
 キスの合間に低い声で呼ばれる自分の名前。
 鼻腔をくすぐる風間の香り。
 ああ、知ってる。この人の香りやぬくもりを。「千鶴」と呼ぶ低くて甘い声を。自分はもう知っている。
 そう思った千鶴はゆっくりと目を開け、目の前の風間を改めて見た。風間も目を開けて千鶴を見ている。
 深紅の瞳はいつもより色濃く、欲望に揺らめいているようだ。
 いつにない〝男〟の顔をした風間に千鶴はごくりと固唾を呑む。
 このままセックスまでいくのだろうか。確かにすぐ後ろには千鶴のベッドがあるが――。
 千鶴が固くなったのがわかったのだろう、風間は訝しげに千鶴を覗き込んだ。
「どうした?」
「え、いや、あの…」
 千鶴はしどろもどろになって風間から目を逸らす。そしてチラリとベッドを見たのだが、その視線に風間も気づいたのだろう「ああ」と呟いた。
 このまま押し倒されるのかもしれない、と慌てた千鶴は、今更かもしれない自己申告をする。
「あ、あの!私、初めてなんです。いえ、風間さんのマンションでエッチしたんでしょうけど、でも記憶にないし…。だからその、私的にはこれが初めてなので…」
「してない」
「なので、あの、なるべく優しく―――……え?」
「あの日、最後までセックスはしていない」
 衝撃的な風間の返答に千鶴は頭が真っ白になった。

 してない??
 最後まで、セックスは、しなかった??

 鼻と鼻が触れ合うほど近くにいる男をまじまじと見て、千鶴は念を押すようにもう一度確認をした。
「え、私と、風間さん、エッチ、してないんですか?」
「してない」
「で、でも…あの日、ベッドの上で裸だったのに…。キスマークだって…」
「酔っぱらっていたお前は途中で寝たんだ」
「……」
 千鶴は唖然と風間を見る。開いた口がふさがらない。言葉がないとはこういうことか。
 男の人の家に上がり込み、ベッドにまで入っておいて。
(ね、寝てしまった…)
 風間の話しぶりからするに、ベッドに入っていちゃいちゃしていたが、酔っぱらった千鶴はその途中で寝てしまったのだろう。
 酔っぱらっていたとはいえ途中で寝てしまうなんて、寝汚いとかそういうレベルを超えている。失礼にもほどがある。
「そ、そうだったんですね…。本当にすみませんでした…」
 青ざめて千鶴が詫びる。風間はじっとりと目を細めていたが、すぐにニヤリと笑った。
「半年以上お預けを喰らったんだからな。覚悟しておけよ」
 低い声で物騒なことを風間は言う。けれどその眼差しはどこまでも優しい。
 だいたい〝お預け〟と風間は言うが、やろうと思えばいつでも千鶴とセックス出来たはずだ。酔っぱらって風間の部屋に上がり込んだ時は勿論、ハワイに行った時だって手を出そうと思えばいつでも出来たのだ。それをしなかったのは、風間の優しさに他ならない。
 どこまで千鶴のことを思いやってくれている。そのことがわかれば嬉しすぎて胸が苦しい。
 風間の首に腕を回し、ギュッと抱き付く。そして小さな声で想いを告げた。
「覚悟なら決めてます。あなたにこの気持ちを告げようって決めた時から…」
「そうか」
 風間も千鶴の背に手を回し、千鶴を抱きしめる。広くて大きな胸に抱きしめられたら、ずっと伝えたかった言葉がするりと出てきた。
「好きです。風間さん。あなたのことが…」
「俺もだ。俺もお前を愛している」
 そう言って風間は千鶴に優しいキスを一つ落とした。そしてゆっくりとベッドに押し倒す。いや、押し倒したというより、二人してベッドに横になったといった方がいいのかもしれない。
 啄むようなキスを繰り返していたが、ふと千鶴は目を開けて目の前にいる風間を見つめた。
 ――ああ、すごいなあ。
 古ぼけたアパートの部屋なのに。大好きな人がいれば、この世界で一番素晴らしい場所に思える。キラキラ眩しくて、幸せな場所になる。
 千鶴だって女の子だ。運命の人がどんな人なのか、ずっと夢見ていた。素敵な人だったらいいなと思っていた。
 けれどまさかこんな破天荒な人だったとは。型破りで、そして誰よりも輝いている人だったとは。
 千鶴は小さく微笑み、もう一度ぎゅっと風間を抱きしめた。

◇◇◇

 「覚悟しておけ」と言ったにもかかわらず、とても優しいセックスが終わった後、千鶴はぼんやりと古ぼけた天井を眺めていた。
 緊張と慣れないことをしたせいかあちこちがギシギシと鳴りそうで、なんとなく身体を動かすのが億劫だった。でもそれ以上に――
 千鶴はチラリと横を見る。隣には幸せそうに微笑む風間が同じようにベッドに横になっていた。自分を見つめる視線に居たたまれなくなった千鶴はぷいっと横を向いた。
「――あんまり見ないで下さい」
「どうして」
「どうしてって…恥ずかしいからって何度も言ったじゃないですか…」
 何度も何度も。セックスの最中も千鶴は「あまり見ないでほしい」と何度も言った。だが、風間は一向に聞く気配がない。乱暴なことや千鶴の嫌がることはしないが、だがこの件に関しては「俺はお前を見たい」と言って聞く耳をもたないらしい。
 どんな顔をしているのかわからない上に、目の前にいる男はとんでもない美形なのだ。マジマジと見てほしくないのは女心として当然だろう。
 だが、風間は、
「――俺は見たい。お前の姿を見たい。どんな姿でも愛おしいお前を目に焼き付けておきたい」
 と言い張って聞かない。
「なんですか、それ…」
 顔から火が出るとはこういうことだ。
 赤面した千鶴がシーツを目深にかぶると、風間が小さく笑う気配がした。そしてゆっくりと枕に広がるほつれた髪をほどいてくれる。
 そんな何気ないことに千鶴の胸は高鳴りっぱなしで、ああ、本当にとんでもない人と恋人になったんだなあと思ってしまう。
 千鶴が軽く息をついた時、風間の低い声が耳に滑り込んできた。
「――新しい職場はとんな所なんだ?」
 風間の問いに千鶴は「え?」とシーツから顔を出した。
 そこには優しいけれど、どこか心配そうな顔で千鶴を見る風間がいる。
「秘書を辞めて新しい職場に行くのだろう?」
「え、あ、はい、そうです!」
 現実に引き戻された千鶴は大きく頷くと、急いで起き上がった。少し身体は痛むけれど、そんなことは言っていられない。
(風間さんにもこれから勤める会社のことは知っていてほしいもの!)
 そう思った千鶴は、シーツを体に巻き付けてラックにしまっていた企業紹介パンフレットを風間に差し出した。
「シンセングループっていう警備保障の会社です。そこの事務兼秘書として来月から出社します」
「……」
「そこの社長と副社長――近藤さんと土方さんっていうんですけど、その方たちもとてもいい人でした。この会社ならきっと上手くやっていけます!」
 千鶴が胸を張ってそう言うと、風間は顔をしかめてパンフレットをほうり投げた。
「ここはダメだ」
「ええ!?」
 まさかの反応に千鶴は目を丸くする。
 風間なら大手を振って応援してくれると思っていたのに。一体、どうして…。
「ど、どうしてですか…?」
「とにかくダメだ。俺の第六感が言っている」
 風間は苦虫を潰したような表情のまま大きく首を振った。だが、そんなことを言われても納得できるわけがない。
「第六感って…そんな抽象的なこと言われても」
「前も言っただろう。俺の直感は外れたことがないんだ」
「でも」
「ダメなものはダメだ。ここで働けばロクなことにならない」
 要領を得ない風間の返答に千鶴は苛立ってしまい、少し声を張り上げた。
「だからどうしてですか!」
「俺の第六感がそう言ってるからだ!」
 風間も声を荒げて言い返してきたが、だがそんなこと言われて「そうなんですね」と頷けるわけがない。
「そんなこと言われても納得できません!それに勘という言葉を使うのなら、私だって、ここの職場は素敵だってピンときました!私が働く場所はここだったんだって!」
「いやそれはお前の気のせいだ。絶対にロクでもない職場だ。そうに決まってる」
「いいえ!最高の職場に決まっています!」
 そう言って二人で睨み合った。


 初エッチの後、ベッドの上で初ケンカとは先が思いやられる。もしかしたら亭主関白なのかもしれない――と千鶴は少し不安に思ったが、だが風間は優しかった。
 いつも千鶴のことを思ってくれたし、とても大切にしてくれた。いつも一番に千鶴のことを考えてくれる、本当に最高の恋人だった。

 ただこの新しい職場のことを除いては。




 




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お礼SSはこの一話のみです。


長い間お付き合いいただきありがとうございました。
このお話は取りあえずこれで終わりです。
11月のゆきさくらで本にしてまとめるつもりですのでよろしくお願いします









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