ありがとうございました! お礼画面は勝デク三種です ■ 脇目も振らずがむしゃらに。 しゃにむにに走ってたどり着いた先はひとりぼっちだった。 誰も隣にいない。誰も「僕」を呼ばない。 振り返れば数歩後ろに仲間だろう人が。 その更に後ろに救うべき人が僕を呼んでる。 「ヒーローデク」を。 いつだか忘れたけども、焦った学生時代に みんなと同じではいられないと考えた事もあった。 直ぐに僕が象徴にならなくちゃ、と。 誰も泣かない、笑って救えるヒーローにならなくちゃ、と。 そういえば最近ずっとヒーロー観察ノートをつけていない。 最後に書いたのはいつだったっけ? 僕が思い描くヒーローってどんなだっけ。 「風、つよい、なあ」 僕が目指した頂はこんなにも寂しいものだったのかな? 平和の象徴オールマイトはこんな世界に 何年もずっと身を置いていたのかな。 それでも笑って、救って。 弱さなんて見せずに、ずっと。独りで。 サイドキックが居なくても。 どうも僕にはまだ覚悟が足りないみたい。 力も足りないのに誰も居ない。 誰か。 だれか。 「おいクソデク」 「あいた」 高いたかい、普通なら登れない都庁の屋上から 地上をぼんやり眺めていたらいきなり頭を叩かれた。 突然の事にびっくりしてその相手が誰だか数秒間わからなかった。 「……かっちゃん…? は、えっ? えっ!? なんでここに!?」 「テメェのアホヅラが見えた」 「どこから見たの!?」 君は変わらない。いつだって自信家で 自信の通りの実力の持ち主。 でも鍛錬も怠らないしひけらかさない。 子供の頃に比べたら大分大人しく丸くなったと思うけど それでも昔のまま、やっぱり強くて勝ち続けるヒーロー。 僕の憧れだった人。 「何しとんじゃ」 「別に、特には」 「そーかよ」 何も言わず僕と背中合わせに座る。 いつか君と肩を並べられたらと思っていたのに 今でも見ている景色はどうやら違うみたいだ。 そう思ったら、高く澄んだ青い空が滲んで見えた。 ヒーローは、泣かない。 象徴は、笑ってみんなを救わなきゃ。 泣いてる子を笑顔にしなきゃ。 「おい、クソナード」 強風で君の声が聞こえにくい。 だからだ。そんな優しい声聞いた事がない。 これは風のせいだ。 そうだ、こんなに涙が止まらないのも目にゴミが入ったから。 「クソナードがどんだけ背伸びしたって俺のが凄ェ」 「…うん?」 「だからクソナードは大人しくしとれ」 人前で泣くなんていつぶりだろう。 「そーやってキタネーツラして泣いてンのがお似合いだ」 「…何言ってんのかっちゃん。ヒーローは、泣かないっ」 「おーおー言ってろ泣き虫」 「泣いてない」 「いつだってピーピー泣いてんじゃねーかクソナード」 「子供の頃の話だろ!」 「今も変わんねえわ」 君だけはずっと僕を見ていてくれていたんだ。 無個性の頃からなんだかんだ言いつつも僕の側にいてくれて。 擦れ違いや暴力もあったけど きっとそれは君なりの優しさだったんじゃないかな。 だって、君だけはずっと、何があっても僕と対等で居ようとしてくれた。 僕が馬鹿だから気付かなかったけど、焦って周りが見えていなかったけど。 だって、ほら、今だって僕より上にいてくれるじゃないか。 ライバルだなんて烏滸がましい。 肩を並べるなんてとんでもない。 いつだって僕の前にいて引っ張ってくれる。 「かっちゃんあのさ、下、下りたらごはん食べ行かない? 奢るよ」 「は? 行かねェわクソが死ね」 「全く。かっちゃんも変わんないなぁ」 かっちゃんは僕のヒーローだ。 ■ |
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