THANKS FOR CLAP! 封神ver
少し反った後頭部を右手で支える。頭巾を取った頭は、体つきに応じて僕より一回り小さい。この小さな空間に僕には無限に思える宇宙が存在するのだから、人の身体は不思議だ。
腰をかがめて、顔を近づける。何度か瞬きするほど見つめあってから、僕はある一点に引き寄せられて更に近づく。師叔の後ろに回したてのひらに身じろぎが伝わってくる。唇がもう少しで触れ合う、というところで、その前に鼻に何かがかぶさって阻まれてしまう。柔らかで平らな・・・手?
「待て、楊ぜん」
「は?」
「今は駄目だ。口内炎が痛くてかなわん」
目を剥いた僕に、師叔は下唇を突き出して見せた。
なるほど。小指の先ほどのふくらみができている。
「・・・あるのはわかりましたけど」
不服さを滲ませた僕に、師叔も眉を寄せる。
「む。口内炎を侮るでないぞ。地味だが食べるのも話すのも億劫になる。
しかも唇にできおって」
「・・・腕を落とされてもケロリとしていたくせに」
一度遠ざかった顔に接近すると、師叔がわずかに頭をひいた。支える手でそれを封じて、上唇をぱくりと噛んだ。紅を引くみたいに唇を舌で一撫でしてから、師叔を解放する。
「僕がお預けを食らったまま大人しくしていると思います?」
「まるで子供だのう」
小さな手が、できの悪い子をいさめるように頭をぺしりと叩く。痛くなかったはずですけど、と言ったら今度はグーで叩かれた。