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手を伸ばせば届く距離なのに、触れることが出来る距離なのに。 どうしてこんなにも遠くに感じるのだろう。 真弘は珠紀を目の前にして泣きたいと思った。どうしようもないくらい惨めな気持ちだ。 「珠紀。」 「はい、何ですか?」 いつもより頭一つ分高い場所に珠紀の目がある。 珠紀の背が伸びたわけではない、かといって真弘の身長が縮んだわけでもない。 いつもと違うのは二人の足場だ。 「確かに俺は後ろをついてこいといった。」 いつだってどんなときだって、お前は俺の後ろをついて来ればいい。 いつだったか真弘が放った言葉通り、珠紀はそれ以降二人で歩くときは、真弘の後をついて歩くようになった。 なんだかんだで珠紀はそれなりに真弘の言うことをきちんと聞いてくれる。 真弘も口では生意気だといいつつ、珠紀のそんな素直な一面を愛おしいと思っている。 思っているのだが…。 「だが…今は俺の前にいてくれ…。」 「はい、分かりました。」 たんたんたん。 軽い足音が横を通過して、さらに少し前で止まる。 今度は珠紀の目線が頭一つ分下になった。 つむじや分け目まで綺麗に見える。こうやって上から眺めるのは久しい。 もしかしたら、最初に出会った時以来かもしれない。 「とりあえず、下りのエスカレーター乗るときは絶対前に居ろ。もしくは隣。」 言ってて情けなくなるけれど、後ろに立たれた時の悔しさに比べたらまだマシだ。 珠紀の「真弘交際ルールブック」に新たなルールが追加された、ある日のデートの出来事だった。 |
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